新たな視点と独自の取材でお伝えするeyes23です。有名人になりすましてカネをだまし取るSNS型投資詐欺。詐欺グループが重要視しているのは、被害金が振り込まれる「銀行口座」です。闇バイトなどで個人の口座を売り渡してしまう人がいる一方で、詐欺グループが会社ごとを騙して法人口座を入手している実態が明らかになりました。その巧妙な手口で独自取材で追いました。

半年間で500億円超「SNS型投資詐欺」の振込先に変化

堀江貴文さんのフェイク動画
「こんにちは、堀江貴文です」
前澤友作さんのフェイク動画
「こんにちは、私 ゼンザクユウサは日本人に高収入をもたらす…」

フェイク動画や偽広告などを入口に、投資の勧誘をしてカネをだまし取る「SNS型投資詐欺」。私たちが取材した被害者Aさんは、投資塾を名乗る集団に4500万円余りをだまし取られたといいます。

被害者Aさん
「グループLINEに参加したことがきっかけで、海外の証券会社で投資を勧められました。絶対に詐欺グループを逮捕してほしいと強く願っています」

主な手口は、有名人やそのアシスタントを名乗る人物が、SNS上で、投資の取引サイトなどに誘導するというもの。

その後、サイト上では投資したカネが増えたようにみせかけ、次々と指定された口座に振り込むことで被害が拡大するのです。

警察庁によると、こうしたSNS型投資詐欺の被害額は、2024年1月〜6月の半年間で500億円を超えました。

被害相談を受ける弁護士は、詐欺に使われる口座が最近、変化していると指摘します。

葛田勲 弁護士
法人口座が増えてきていると思います。法人口座のほうが、一度に詐欺(グループ)側が集めたお金を他の口座に移転する(ことができる)金額が大きい。詐欺側にとって使いやすい口座だということは、ひとつあると思います」

詐欺グループにとっては、個人口座より法人口座のほうが一度に扱える金額が大きく、また、被害者が振り込む際に“怪しまれにくい”というメリットがあるといいます。

実際、被害者Aさんが振り込んだ13の口座のうち10が法人口座でした。詐欺に使われた法人口座はどのようにして詐欺グループの手にわたっているのでしょうか?

振込口座の会社を訪ねてみると…

私たちはまず、2023年11月から2024年1月の間に詐欺の振り込み先になった会社情報などを調査。

2024年1月15日に被害者が振り込んだ口座の会社を見ると、その3週間ほど前に社長が代わっていることがわかりました。さらに、他の複数の会社でも口座が詐欺に使われる数か月から数週間前に社長が代わっていたのです。

一体何が起きているのでしょうか…

喜入友浩キャスター
「こちらですね、詐欺の振り込み先となった口座の会社が入っている建物です。3階建てのアパートですね」

会社情報をもとに被害者が2024年1月、約900万円を振り込んだ口座の会社に向かうと、そこは、アパートの一室でした。

部屋を訪れても、応答はなし。近隣住民にこの部屋のことを聞くと…

近隣住民
「住んでいない。半年以上いないよ」

――どんな方が住まれていましたか?
近隣住民
「外国人さん。夜中に帰ってきたり、出入りがあったりしていたかな」

住んでいたのは外国人で、2023年秋ごろに引っ越していったといい、その人物を探しに何人もの人が訪ねてきていると話しました。

近隣住民
「オレオレ詐欺(に関与している)っていうのは聞いたかな。外国人の子は、もう国へ帰っているみたい、そういうことを言っていた」

口座が詐欺に使われる直前に社長となった外国人が、すでに日本から出国したとみられることがわかりました。

振込口座の会社社長を直撃

さらに実態を探るため、九州に向かった取材班。堀江貴文さんになりすました投資詐欺、その被害者が振り込んだ口座の会社を訪ねました。

会社の前で待っていると…

――すみません、(社長)ですか?
社長「はい」

記者に驚きながらも、淡々と取材に応じた社長。口座が詐欺に使われていると認め、こう主張しました。

口座が詐欺に使われた会社の社長
「仕事関係で繋がった人にやられたって感じですね。僕の口座のIDとか、パスワードを変えられて、(口座が)完全に向こうのものになっているんですよ。自分の口座を取られて、それを勝手に使ってやりとりしている。詐欺に使っている」

社長によると、知人の紹介で出会ったX氏と共同事業の話が持ち上がり、2023年9月、その事業のために口座を開設したといいます。

そして、その口座の運用をX氏に任せ、IDやパスワードなどを渡したところ詐欺に使われてしまったというのです。

口座が詐欺に使われた会社の社長
「いや、もう最悪っすね、率直に言うとほんと最悪ですよ。それは僕の管理ミスっていうのは絶対あると思うんですけど、もちろん詐欺で使うつもりとかはなかったですし」

その上で、口座を奪ったX氏について…

口座が詐欺に使われた会社の社長
「その人物(X氏)自体は、僕もバカだなと思うけど、全く知らないんですよ。だから(X 氏は)名前も『これ偽名ですからね』って言ってて付き合ってはいたんで、今も素性は知らない人ですよね」

X氏とはその後、一切連絡が取れなくなったといいます。安易に他人に会社の口座を渡した結果、社長は民事裁判で1000万円あまりの損害賠償命令を受けました。

一方、被害者が振り込んでしまったお金は、戻ってくる可能性はあるのでしょうか。弁護士は口座にお金が残っていても、他の被害者と分け合うことになるため、少額しか戻ってこないケースも多いと話します。
  
葛田勲 弁護士
「100万円の口座に7件も8件も法的手続き(返還請求)が入っているということもあります。これはもう運にかなり左右されるところもあります」

さらに取材を進めると、口座だけでなく会社ごと詐欺グループに乗っ取られたという人物にたどり着きました。

「コロナで困窮」会社を売ったら詐欺に…

被害者が振り込んだ詐欺口座の持ち主、A社の社長が取材に応じました。佐藤氏(仮名)は現在、20人以上の被害者から訴えられているといいます。

――私たちが取材している被害者は、(A社)有限会社に500万円振り込んでいることがわかりました。これはご自身が振り込ませたんでしょうか?

A社社長 佐藤氏(仮名)
「いえ違います。私は知人を通して、会社の売買をして、その後のことですので、私が振り込ませたとか、そういうのは一切知りません」

――具体的にいつ、どういう経緯で会社を売ろうと

A社社長 佐藤氏(仮名)
「コロナとかそういう影響がありまして、会社としても立ち行かなくなってきたので、会社の売買の話が来たので、私も乗ることにいたしました」

“畳もうとしていた会社を売っただけ”だと話す佐藤氏。そして、その相手は会社がほしかったわけではなく、口座だけを狙っていたのではないかと指摘します。

A社社長 佐藤氏(仮名)
「(相手は)困窮している会社、そういった会社を探している人でしたので。会社売買でしたら合法ですけど、口座売買となると違法ですから、それをグレーゾーンでやっているような人たちなのかなと」

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