離婚した後も父と母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」についてです。どちらか一方が親権をもつ「単独親権」に加え、双方に親権を認める「共同親権」の導入が決まりました。離婚しても両親がともに養育に関われるという面がある一方、さまざまな課題が残っています。

「可決します」

20245月、共同親権の導入を柱とする民法などの改正案が国会で成立しました。導入後は、父と母が協議して単独親権か共同親権かを決めますが、合意できない場合は家庭裁判所が判断します。すでに離婚している親が共同親権を裁判所に申し立てることもできます。この仕組みについて憲法学者は危機感を示します。

<東京都立大学 木村草太教授(憲法学)>
「どちらか、あるいは両方が共同親権は無理といっている場合であっても裁判所は強制的に共同親権を命じることができる。これは非合意強制型の共同親権で、協力関係にない父と母が共同親権という状態になっていると、子どもが手術を受けたりとか学校に進学したりする時に、父と母の意見がまとまらなくて結局決定ができない、子どもの利益を害することになる、これが1番の問題」

DVや虐待の恐れがある場合は裁判所が単独親権にしなければならないとされています。一方、共同親権になると、幼稚園や学校の選択、進学か就職かの選択、転居先の決定などについて父と母どちらの同意も必要になります。

離婚後も、両親の考え方が子どもの生活に影響を与えることになります。

<高校生(16)>
「なんか本当に記憶ない。記憶ない。もうほぼ他人のような人にこうなんか言われるのはちょっと嫌だなっていう感じはします」

静岡県中部に住む高校1年生です。2歳の時に両親が離婚して以降、母親と暮らしていて、父親からの連絡はなく全く会っていないといいます。


「今、進路とかで悩んでいるんですけど、そういうのも(父母の)同意がないと決められないとなると嫌だなって。親に左右されずに自分の人生生きたいっていうのが強い」


「ここはお子さんが4人いらっしゃるお宅なので、お子さんの人数に合わせて調整しているんですが、ちょっと多めにしています」

静岡県内で、ひとり親家庭の支援を行う団体です。相談会を開いたり食料を配布したりしています。代表の田中さんは共同親権がひとり親にもたらす影響を危惧しています。


「お願いだから別れてほしい、親権だけほしいって形で別れている夫婦がまたこれによって恐怖に引き戻されないといけないっていうのが、まず、すでに離婚した人たちは怖いっていうのと、我慢に我慢を重ねた上で離婚を選択している夫婦もこれによって、大事な子どものことで争わないといけない」

国は、2026年までの共同親権の導入に向けてどのような場面で両親の同意が必要なのかなど、具体的なガイドラインを示す方針です。


「真摯な合意がある元夫婦以外は(共同親権に)できないような運用にしていかないと、子どもが被害を受けると思うので、慎重に進めていくような運用であってほしいと思います」

共同親権が導入されると保護者の同意を得ることの多い学校や医療機関にも影響が出てきます。それぞれの現場の声を取材しました。


「(父母の)見解が食い違うっていう時には家庭裁判所の判定といわれても、それなりに時間がかかるだろうし、本当に子どもたちの教育活動が停滞しかねない」

さらに、檀原書記長は高校の無償化制度について共同親権では父母2人の所得で判定を行うことになり、対象から外れる子どもが出る可能性を指摘します。
一方、医療現場の懸念は。


「やっぱり承諾書を求める場面、つまり手術とか検査に関することが1番心配されているんですけど、子どもが適切な医療を受けることができるようにする措置を許容してほしい」


共同親権の運用に向けては当事者や現場の声をふまえた体制やガイドラインが不可欠だと感じました。

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