今月8日にすい臓がんであることを公表していた富山県氷見市の林正之市長は、27日に臨時の記者会見を開きました。​「公人として市民に対しての説明責任はある」として、病状について詳細に説明しました。任期途中の11月8日付で市長を辞任することを正式に表明。11月にがん切除手術の予定で、元気な体になることを目標に治療に専念し、元気な体を取り戻したうえで一市民として市政発展に貢献させていただきたいとたいと力強く語りました。

すい臓がんを公表していた氷見市の林市長。自身の病気について説明するための記者会見を27日午後に開きました。記者会見の冒頭で「富山新聞」が、前日26日の朝刊に「がん末期」と報道したことについて、厳重に抗議したことを明らかにし、記者会見への参加を拒否したと説明しました。

林正之・氷見市長:昨日の新聞におきまして富山新聞社の方では「がん末期」ということで、これは私は非常に曲解した言い方で私本人並びに家族に過度な不安と苦痛を与えたました。通常「がん末期」という表現につきましては、一般的にはもう治る見込みはなく余命幾ばくかの印象を与える表現でありますし、また厚生労働省の基準では治療に反応せず進行性かつ治癒困難な病状にあるとこういうふうに「がん末期」を定義するものでありまして、こういった新聞記者の方が勝手に人の命を軽んじる、そしてまた患者の治療に向き合っている私のそういった心情を害し、またいろんな方に心痛を与えたことを本当に私は残念に受け取っております。

 この記事を読んだ私の90歳の母は『あんたの葬式の前に何か私の方が先におくってくれ』と泣いて寝込んでしまいました。また何人かの知人からは泣き声で『市長あんたそんなひどいがけ』というようなことでありまして、私も『大丈夫』と何度も苦労したわけでございます。

富山新聞は、27日の朝刊で「がん末期とあるのはステージ4の誤りでした」と訂正文を掲載しました。

林市長は、訂正文が載っているが全く謝罪の意味は読み取れないとして、不誠実な報道を行った富山新聞社の記者に対して猛省を求め、適切な謝罪があるまで私の記者会見への参加を認めないとしました。

林正之・氷見市長:単なる「ステージ4の誤りでした」という訂正文でありまして、言ってみれば『コシヒカリとてんたかくを間違えました』みたいなもんで、そういうもんじゃないと思うんですよね。こうした不誠実な報道を行った富山新聞社の記者に対しまして、猛省を求めて適切な謝罪があるまで私の記者会見からは説明にあたって申し述べさせていただきました。

1日たりとも市政の停滞があってはならない

林市長は、7月22日に背中に痛みを感じ病院を受診。翌23日に金沢医科大学氷見市民病院で検査入院。31日に退院し、8月1日から公務に復帰。8日の記者会見では、病名について「悪性のすい腫瘍」と明らかにし、治療しながら公務を続けてきましたが、25日に開いた自身の市政活動報告会で、今年10月末での辞任を表明していました。

林正之・氷見市長:私の病気につきましては、市民の皆様をはじめ関係の皆様に多大なるご心配をおかけしておりますことを誠に申し訳なく思っております。病名はすい腫瘍ということでございまして、肝臓にも転移がみられたということでございます。いわゆるすい臓がんということでございましてステージ的にはステージ4ということになります。

 私の現在の治療と致しましては、化学療法と致しまして氷見市民病院におきまして点滴による抗がん剤の投与を月に2回。1回あたり2時間程度通院して行っているところでございまして、この抗がん剤により、がんを小さくして切除することとしております。

 またこれと合わせまして毎週土曜日に東京のがん専門クリニックに通いまして、免疫療法ということでございまして、この免疫療法は第四のがんの治療方法と言われております。この治療方法は私自身の血液を採取致しましてそれを培養し、免疫細胞を増加させ、その血液を体内に戻してがん細胞を排除するそんな治療方法でございます。

 またそれと合わせてがんの治療薬であります『オプチーボ』という薬の点滴治療もスタートしております。このような治療を続けていくわけでございますけども、震災復興や人口対策など重要な課題の解決に取り組んでいかなければならない中、台風や豪雨等の災害をはじめ有事への対応など日夜気の抜けないまま市長の職務であります。

 1日たりとも市政の停滞があってはならないわけでありますので、震災からの復旧復興に一定の区切りをつけることができる段階で辞職させていただきたいと思います。その震災からの復旧・復興に向けましては、『公費解体』とか『災害公営住宅の建設』そして『液状化対策』の3つが復興に向けてのカギとなるものと思っております。

辞任は市政発展のための “最善の方策” として決断した…

会見では、辞任のタイミングについても、復旧復興の進捗や政治状況から判断したことを明かしました。

林正之・氷見市長:公費解体につきましては、県の構造物解体協会等とも合意をして契約を終え、今後は円滑に進むものと思っております。また災害公営住宅につきましても、今後の実質設計等の予算を9月開催の市議会定例会に補正予算案として計上することを検討していまして、建設に向けて順調に進んでいるところであります。液状化対策につきましては、その対策工法を検討していまして10月にはその対策工法をお示しできる予定としておりますので、10月末ごろには震災からの復旧復興に向けた取り組みにおきまして一区切りになるのではないかと考えております。

 ちょうどその頃11月8日が県知事の任期満了にあたり、現時点では10月27日の県知事選挙の投票日としております。そうしたことからそれと合わせて氷見市長選挙を行うことで投票される方のご負担も軽減できる。また選挙事務につきましても人的、経費的な面で効率的に実施できるのではないかと考えています。また私の治療の方も先ほど説明しました抗がん剤あるいは免疫療法これが10月で一区切りし完了する予定でございます。

 うまく行けば11月には入院をしてがんの切除手術を行うことになると思っています。私の任期は4月6日までとなっておりますけど、そうしたことを総合的に勘案し、今後のことも考えまして県知事の任期満了日に合わせて、私の任期も11月8日ということで、11月8日に辞職することと考えています。そのため退職の申し入れを9月定例会が閉会したのちに議長に提出したいと考えております。

 生まれ育った氷見市の発展に貢献したい、ただその一念で市長に立候補させていただき、就任してからこの7年5か月たったわけでございます。まさに全身全霊で市政運営にあたってきたわけでございますが、今ここにおきまして道半ばで病に倒れることはまさに痛恨の極みであり市民の皆様方はじめ関係の皆様方に大変申し訳なく思っております。今後の市政発展にとりましてこれが最善の方策であると決断でした次第であります。何卒ご理解をいただきたいと思います。

一刻も早く抗がん剤をしたほうがいい…

記者との一問一答

記者:辞職を決めたタイミングは?

林正之・氷見市長:8月8日には記者会見で今後とも市政の運営にあたりながら市政の運営を続けたいと思っておりましたけども、その後、抗がん剤の副作用でやっぱり倦怠感とか貧血による立ち眩みとかいろいろ副作用が出てまいりまして、やはり長い間職務を続けるのは困難でないかと、そんなことをお盆休みの間で実感した所でございまして、25日には国政・県政・市政報告会があるので、そこで皆様にまずお許しを願ったうえで正式に辞任を発表したい、そんな思いに至ったところでございます。

記者:細かいところまで病状を説明するのはどうして?

林正之・氷見市長:あんまり説明はしたくないんですけど、記者の皆様からどうなのか聞かれるので、公人として市民に対しての説明責任はあるんじゃないかなということで詳しく説明をさせていただきました。ただやっぱりこれは病気に関することなので、ある新聞社のようにそれを曲解をしてですね。がん末期とか書かれるのは非常に心外であります。

記者:自覚症状は検査入院前にあったのでしょうか?

林正之・氷見市長:病気の発覚でございますけども7月23日に入院したんですけど、20日ぐらいだったでしょうか。背中の方が少し痛いということで少し湿疹があったので、帯状疱疹かなということで皮膚科を受診しましたが、そうじゃないということでしたけれども、いろいろネットで調べると内臓疾患から背中が痛くなることもあるということで7月22日に氷見市民病院の内科を受診してMRIをとりましたら、すい臓に腫瘍が見つかったということで、次の23日に入院をして主治医は一刻も早く抗がん剤治療をした方がいいということで、早速23日と1週間後の30日の2回抗がん剤投与をしたところでございます。

記者:あまり自覚症状はなかった?

林正之・氷見市長:そうですね。全く自覚症状もなくて、ただやはり市役所の職員の中でも例えば検診で腹部エコーですい臓がんが見つかったという方もいらっしゃいます。そんなことを思うと私も昨年の夏ごろには腹部エコーをやっておりましたので、その時は異常はなかったので1年間で進んだのかなという風に思います。

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