栃木県宇都宮市を走る次世代型路面電車「LRT」が開業して、8月26日で1年となりました。利用者数は予測を上回り、沿線では子育て世代が増加。国内外の自治体も注目しているこのLRTですが、課題も見えてきました。
「宇都宮LRT」1年 予測上回る利用者 沿線人口も増加
かけ声と共に動き出した黄色い車体。LRT=次世代型の路面電車です。開業1周年を祝うイベントが宇都宮市で行われました。
1日あたりの利用者は、平日が1万5000人から1万8000人と開業前の予測の1.2倍で、土日は予測の2.3倍になっています。なぜ利用者が増えているのでしょうか?
住民
「(Q.街は変わりましたか?)めっちゃ変わりました」
「宇都宮の人がめっちゃ増えてる」
住民
「LRTが通ったことで子育てしている人、小さい子どももマンションに住むようになった。友人もこの辺に住む子が増えてきた感じはします」
LRT沿線には次々と高層マンションが建設されています。
宇都宮市全体の人口が減少傾向にあるなか、LRT沿線では12年前と比べて約8%の5000人の増加。多くが子育て世帯ということです。
LRTは宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地の14.6キロを結びます。
沿線は宇都宮大学やホンダやキヤノンといった大手企業の工場が立ち並ぶエリアで、通勤・通学の足になっているのです。LRTの開業で生活が変わった人も…
宇都宮市に住む阿久津正躬さん(78)。出かけるときはマイカーで移動していましたが、LRTが走るようになってからは、車の利用は減りました。
というのも、運転免許証の自主返納を考えるようになったからだと話します。
阿久津さん(78)
「いずれ返納というか、いくら自信があっても感覚が鈍ってくる。そしたら返納して」
以前は自宅から10キロ以上離れた病院に車で通っていましたが、いまはLRTを利用しています。
阿久津さん
「LRTは安心安全。(車内は)涼しいし。必ず決まった時間に、特別なことが無い限りは到着しますから」
LRTを使ったまちづくりは国内外で注目されています。全国の自治体や海外からの視察は2023年度に304件となりました。
宇都宮市 佐藤栄一市長
「少子高齢化による人口減少が進んでいく。地方都市であればあるほど社会を支えていくためには、誰もが自分の力で移動ができるまちを早急につくっていかないと、働く世代の負担が増えていってしまう。持続できる社会が構築できない」
多くの地方都市が抱える人口減少や少子高齢化。LRTは地方都市の救世主となるのでしょうか。
次世代路面電車 地方活性化のカギに?
藤森祥平キャスター:
利用者が予測を上回っているという宇都宮のLRT、ピーク時には6分間隔で運行していますが、都市交通計画に詳しい早稲田大学の森本章倫教授は「時間を気にせず乗れる都心レベルの利便性がある」として、日常生活の足になっているのではないかということです。
他の手段と比べると…
地下鉄 大量輸送:◎ コスト:高 定時運行:〇
バス 大量輸送:△ コスト:低 定時運行:△
LRT 大量輸送:〇 コスト:中 定時運行:〇
▼地下鉄は大量輸送・定時運行できるもののコストは高く、▼バスはコストは抑えられるが、地下鉄に比べれる大量輸送はできない、定時運行にも渋滞などの影響が出やすい…ということですが、間を取ったのがLRTです。バスよりも大量輸送でき、地下鉄ほどコストがかからないというメリットがあります。
宇都宮市がLRTを導入する理由として、将来的に脱・クルマを目指しているということがあります。
沿線を利用している地域のデータをみてみると、ライフスタイルが変わったことが分かったようです。
▼車の利用
1日平均あたり約3800台分の利用者がLRTに
▼外出率
開業前75.7%→81.4%
▼1日の平均歩数(40歳以上)
349歩増加(+7%)
小川彩佳キャスター:
7%は大きいですね。LRTが生活・健康にも影響を与えているかもしれないということですね。
キニマンス塚本ニキさん:
ヨーロッパの公共交通インフラが充実している街では、人々の幸福度も上がると報告している研究もあって、暮らしやすさが高まるにつれ、街が豊かになるということでしょうか。
環境問題が話題になっている中、脱炭素化、CO2削減という点でもLRTはすごく良いモデルになると思います。
藤森キャスター:
地下鉄よりコストが低いとはいえ、宇都宮のLRTの総事業費は約684億円です。
半分は国の補助金ですが、残りは宇都宮市と芳賀町が負担し、20年かけて返済するといい、宇都宮市は年間最大13億円支払うということです。
地元関係者によると、今は盛り上がっていて目に見えて効果もありますが、これが2年後3年後、どのように経済効果が続くのか。周辺地域も含めて、2次交通・3次交通と利用が盛んになるようにしたいが、具体案ははっきりしない状態だといいます。
小川キャスター:
那覇や和歌山など他の自治体でもLRTの導入が検討されているということです。税金も使われるということで、宇都宮でも賛否がわかれる形で始まりました。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
東京一極集中を緩和して、地方の中核都市に頑張ってもらおうというのは国の政策、CO2を減らそうというのも国の政策です。
高齢者に免許の返納を検討してほしいというのも国全体の方針なので、もう少し国が前面に出て補助を多くするとか、地域によってやり方があると思うので、アドバイスするなどしてもいいように思います。
バリアフリーで、お年寄りが電車に乗って買い物に行く、お医者さんに行くということが楽になると、住みやすさは増してきますよね。
『次世代型路面電車=LRT』について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『次世代型路面電車=LRT』について「みんなの声」を募集しました。
Q.「次世代型路面電車=LRT」地方都市の経済活性化に有効?
「大いに有効」…19.8%
「立地条件に預手は有効」…63.6%
「あまり思わない」…6.6%
「全く思わない」…2.3%
「その他・わからない」…7.9%
※8月26日午後11時25分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは27日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
キニマンス塚本ニキさん
英語通訳・翻訳者
ラジオパーソナリティ
9~23歳までニュージーランドで過ごす
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