ネット注文の普及などもあり、山陰でも書店の撤退が報じられるようになっています。
こうした中、店の主の好みが反映された、個性的な品ぞろえを特徴にしている独立系書店が注目されています。

島根県雲南市三刀屋町の天満宮例大祭の一角で、空き店舗にひっそり店を開いていた本屋がありました。
しかも中に入ると1つの店でなく、いくつもの店舗が並んでいて、客はそれぞれのスタッフとの会話を楽しみながら本を選んでいました。

イベントを主宰した千葉絢子さん
「皆さんそれぞれにお店のカラーが出ていて。あと年代も子どもさん向けの本もあるし、私みたいな年齢の、大人が楽しめる本もありますから。島根県とか県外の本好きな人が沢山集まってくれるような機会が作れたら良いなと。」

地元で建築士事務所を営む千葉絢子さんが町の中心部に小さな書店があった時代をしのび、知人に呼びかけて開いている出張本屋のイベントです。
去年6月にスタートしてから5回目のこの日は、県内各地のミニ書店8店舗がそれぞれこだわりの本を並べ、訪れた人が気に入ったものを買い求めていました。

市内の女性
「地元です。結構、若い方も手に取っておられたので。うん、ネットだけではなくて、実際に来る場があるっていうのは嬉しいですね。そこ(店ごとの個性)が見たくて、こういう所に足を運ぶ方が多いと思います。」

多くの書店は出版取次会社から配本を受けるため、ある程度同じような品ぞろえになりがちといわれます。
県内でも大田市や浜田市で大型書店が閉店するなどSNSの普及やネット通販との競合などで書店経営は厳しい時代を迎えているようですが、一方で、店主が人に読んで欲しい本を選んで並べるこうした独立系書店と呼ばれる店は、個性的な品ぞろえを武器に最近、注目されている存在です。

出張本屋に出ていた松江市中心部にある店では。

書架青と緑・日下踏子店主
「うちは詩歌をちょっと多めに仕入れてやって行こうっていうのを考えてますので。本屋さんは一杯あるけど、詩(の本屋)って何か世の中にないんだったら(自分でやろうと)。」

好きな詩集が並んでいる本屋が現実になくて寂しかったという日下踏子さんが、それなら自分好みの本屋を自分で作ろうと始めた店内には、詩集や文学論などが並び、馴染み客が本を選んでいました。

出雲市からの男性
「週に何回か寄ります。店長さんのセンスが良いんですわ。ここは詩歌なんかが好いとられるんで。いろいろこんな人の世界なんかもね、知ることが出来たりして面白いです。」

ここは本屋としてだけでなく同じ趣味の人たちが集う場としても機能しています。

書架青と緑・日下踏子店主
「うちはきょうも午前中、歌会があったんですけども、歌会の時は毎回来て下さって、短歌のお話もして帰って下さるっていう方も結構おられるので。世界を共有できる、その人の普段見えていない、日常生活だとなかなか立ち入れないような精神的な所まで、お話しする中で垣間見れるというか。」

店主のこだわりが詰まった独立系書店。
本の著者と店、そして客が好きな世界を共有できる場として、今後、小さいながらも存在感を発揮して行くのではないでしょうか。

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