4月1日からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に規制されました。物流の停滞が懸念されるいわゆる「2024年問題」に直面し、業界だけではなく、私たちの生活にも影響が出始めています。

仕事をセーブ、荷主と運賃交渉も

大分市に本社がある「九州ライトニング物流」では、55人のドライバーが九州から関東まで日々トラックで荷物を運んでいます。労働環境の是正を目指す一方、労働時間の短縮により、配送できる荷物が減る「2024年問題」に直面しています。

この状況に対応しようと、会社では4年前から全ドライバーの労働状況がリアルタイムでわかるシステムを導入しています。

山田政輝常務:
「常に拘束時間がわかるので、途中でドライバーの労働時間が多いと思ったら仕事をセーブする。そういう活用ができるのでかなり重宝している」

ただ、残業を抑えると従業員の収入減少につながりかねません。そのため運賃の値上げに向けて荷主と交渉。その結果、5パーセントのアップを実現しました。それでも燃料費などの高騰には到底追いつかず、このままでは「経費倒れになる」と危惧しています。

中田勝治社長:
「設備投資優先でやってきているけど、先行きの見えない部分がありますので、荷主との交渉の中で解決していかないと問題は解決しない」

在庫を置く場所がない…困惑する飲食店

大分市内で8店舗の飲食店を展開する「高橋商店」では、2024年問題により4月から過剰な在庫を抱えてしまう新たなリスクに直面しています。

高橋亮社長:
「在庫を置く場所がないのでどうしても廊下や通路に置かざるをえない状況になっている。すごく作業的にも困っている現状です」

運送会社に毎日行っていた発注が週2回ほどに制限されたといいます。欠品を出さないよう多めの発注を余儀なくされ、厨房内の通路にはビールの樽やケースが山積みに。商品が入りきれず、店外まであふれることもあるといいます。

高橋亮社長:
「2024年問題については調べていたが、このような形になるとは正直想定していなかった。在庫を抱えると経費もかかるし…。夜の営業で商品がなくなれば、次の日に発注できていたのができなくなった。発注方法も慣れるのに時間がかかると思う。どうやってうまくやっていくかみんなが相互で考えないと世の中よくならないので、しっかり責任を持って取り組んでいきたい」

ドライバーの負担減らす「置き配」促進へ

一方、ドライバーの負担になっているのが不在時の「再配達」です。業界全体で年間5億個以上の荷物が再配達されています。350人のドライバーを抱える大分市の運送会社「AEトランスポート」。あるドライバーは、営業所管内で60個の荷物を届ける際、20個の再配達があったそうですが、玄関前などに荷物を置く「置き配」によって負担は軽くなるといいます。

ドライバー 山田洋平さん:
「対面の時よりは時間が短縮できるので助かりますね」

そして置き配の定着のカギをにぎるのが宅配ボックスの普及です。住宅会社「SAKAI」では、新築時に設置する客の数が年々増え、去年は半数以上を占めました。

SAKAI 荒木宗誠さん:
「客は便利と話している。いかに効率よく荷物をお届けできるか、宅配ボックスを設置するのもすごくいいですよと提案させてもらっている」

影響が物流業界にとどまらない2024年問題。事業者だけでなく私たち消費者側も認識を新たにして対応を考えることが解決の糸口となるかもしれません。

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