東京電力福島第1原発の汚染水の浄化処理後も放射性トリチウムなどを含む処理水の海洋放出から1年となる24日、岸田文雄首相が福島県いわき市の小名浜魚市場を視察した。自身の退陣が迫る中、漁業関係者らに「福島県の漁業が生業(なりわい)として継続できるよう、政府として最後まで全責任を持つ」と明言し、政府としての対応は続くと告げた。(片山夏子)

◆「海洋放出がたとえ数十年の長期にわたろうと」

 岸田首相は、県漁業協同組合連合会の野崎哲会長と面談。「海洋放出がたとえ数十年の長期にわたろうと、漁業者が安心して生業を継続できるよう、全責任を持ち対応し、国としての方針を守っていく」と述べ、海洋放出が終わるまで、政府の陣容が変わろうと約束を遂行するとした。

食堂で海産物などを試食する岸田文雄首相(中央)。左は福島県漁連の野崎哲会長=福島県いわき市の小名浜魚市場で(代表撮影)

 中国による日本産の水産物の輸入停止規制が続くことに「全く科学的根拠に基づかない措置で受け入れられない」とし、あらゆるレベルの交渉を通じて即時撤廃を求めるとした。

◆「政権が代わろうと、約束の継続性はあるものと思っている」

 野崎会長は、政府が処理水を巡り2015年に「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」と県漁連と交わした約束に言及。にもかかわらず、政府が海洋放出を決めたことに、「われわれは最後の一滴まで反対なことは変わらない。約束は守られていないが、海洋放出が終わったときに福島で漁業が存続していて初めて納得できる」と緊張感を持って臨むよう求めた。  約束が守られぬまま、約束が重ねられる中での退陣に、漁業者からは不安の声も上がる。野崎会長は面談後、報道陣に「政権が代わろうと、政府が前面に立っての安全な廃炉の遂行と、約束の継続性はあるものと思っている」と語った。 

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