壁に張り付けにされているかのような鬼の石像。
木でできた2体の人形は一つは肩が大きく欠け、もう一つは執拗に刃物のようなもので傷をつけたような跡が…。
これらの不気味な展示があるのは山梨県立考古博物館。
現在【呪いの世界】という夏の特別企画展が行われています。
肩が大きく欠け、刃物の傷跡のある人形について聞いてみると…
――まさに呪いの人形といった感じですが、これは?
県立考古博物館 学芸員 柴田亮平さん:
「こちらは人形(ひとがた)といいまして、甲府市の塩部遺跡から出土したもの」
「呪いと勘違いされることが多いんですが、昔の人は病気とか怪我は悪霊が悪さをして起きると考えられていて、穢れを人形に移して壊すことでよくなると考えていたんですね」
実は「呪い」ではなく、平安時代に使用されたとされる「呪(まじな)い」の人形で、よく見ると顔の部分にはうっすら笑った表情が描かれているのが確認できます。
そして壁に張り付けにされてるかのように見えた鬼の石像も、風神の姿をした『金箔付鬼瓦』。
甲府城跡から出土したもので、厄除けの意味があったといいます。
今回の『呪いの世界』という企画展、実は「呪い」と書いて「まじない」と読みます。
昔の人々が自然災害や病気など、個人の力ではどうしようも出来ない事象に対して、おまじないをして苦難を乗り越えようとしてきた、その歴史が学べる企画展です。
学芸員の柴田さんによると、人に悪意を向けた、いわゆる「のろい」に関連づけられる考古資料はあまりなく、現状をよくすることを願い行われた「まじない」に関する資料が多いということです。
県立考古博物館 学芸員 柴田亮平さん:
「まじないというと、うさん臭く思えてしまうが、昔の人は大きな災害、病気など個人の努力でどうしようもできないことを、まじないの力で乗り越えようとしてきた。こうした まじないは当時の人々が懸命に生きてきた証でもある」
企画展には主に県内で出土した縄文時代~明治・大正時代に祭祀などで使われたとされる壺や鏡などの考古資料、およそ350点が展示されています。
そのなかの1つ、法華経が書かれたいくつもの石。
これは山梨の戦国武将・武田信玄の息子・武田勝頼の二百年遠忌で埋納された経石と考えられ、発見された石は5000個以上。
このことから、死者を弔い功徳を得る、つまり「多数作善」の考え方で、世の中を良くしようと多くの人が願いを込めた一種のおまじないだったと考えられています。
昔の人々にとって身近であった まじないですが、柴田さんは現代にも まじないの文化は根付いているといいます。
県立考古博物館 学芸員 柴田亮平さん:
「例えば地鎮祭といったような まじないは残っている。他にも、今でも困ると神社でお参りはしますよね」
「また、子供の遊びにも残っていて『けんけんぱっぱ』は土地を鎮める まじないの一種と考えられている」
現代にも根付いているおまじない。
昔の人々がその時代を懸命に生き抜こうとしてきた歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
『呪(まじな)いの世界』の企画展は9月1日まで開催されています。
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