地方の百貨店は近年苦戦続きで閉店が相次いでいますが、この状況を打開しようと浜松市で唯一のデパートが挑戦を続けています。

キーワードは「応援」。地元と一緒に発展を目指す新たな戦略です。

火柱が上がる鉄鍋の中で踊るように動く青菜。仕上がりを見れば美味しさが伝わってきます。浜松市中央区の中国料理正木は薬膳の知識を生かした多彩なメニューが特徴。見た目も味も超一級品の創作料理を提供します。

<遠鉄百貨店のバイヤー>
「薬味が夏の感じ」

この名店で写真を撮りながらランチを楽しむ2人は遠鉄百貨店(浜松市)のバイヤーです。
<遠鉄百貨店のバイヤー>
「一番は正木さんに来ていただいて、お客様に触れあっていただいて、イベントをするのが」

この日、2人の目的は遠鉄百貨店で正木さんのイベントを開きたいと提案することでした。世界で数々の賞を受け、テレビ番組で審査員を務める正木さんにとっても百貨店からの誘いは光栄だと話します。

<中国料理正木 正木賢二代表>
「大きいビジネスチャンスだと思っています。ここでうちが浮くか、沈むか、それくらいのチャンスだと思っています」

浜松市の中心街で1988年に開店した遠鉄百貨店。

かつては家族でお出かけを楽しむ場所だった百貨店は曲がり角を迎えています。特に厳しいのが地方の百貨店。郊外のショッピングモールやネットショッピングに押され閉店が相次いでいます。

百貨店の売り上げはコロナ禍が明けて復調傾向ですが、ピーク時に比べると6割にも満たない状況です。そんな中で遠鉄百貨店が見出した生き残り策は「地元の応援」でした。

<遠鉄百貨店 中村真人常務>
「このアイテムが増えれば増えるほど魅力が増す。そのためにはバイヤー」

身近にある魅力的な商品をできるだけ多く店頭に並べたい。

その役割を担うバイヤーを強化するため、2023年に専門の部署を立ち上げました。

<遠鉄百貨店 大城泰崇さん>
「大都市の百貨店とは違い、地方百貨店ならではの特色を地域とコラボすることで出せると思っている」

応援したい地元の商品を見つけるプロジェクトは、すでに加速しています。

「こんにちは」

この日、高坂さんが訪れたのは2022年に開業したばかりの「月のパン屋さん」。色とりどりのパンを揃える人気の店ですがそこに並ぶ異色の商品が今回のターゲットです。

<遠鉄百貨店バイヤー 高坂美帆さん>
「これ、ぜひうちの方でも取り扱わせて頂きたい。浜松土産としてぜひ販売させて頂ければと思うので」

高坂さんが手に取ったのは「スパカリ」という商品。生パスタをカラッと揚げたスナックです。系列のパスタ店で40年以上前からビールのおつまみとして提供されていた商品で、地元出身の高坂さんにとっては懐かしい味なんです。

<遠鉄百貨店バイヤー 高坂美帆さん>
「いま昭和レトロが流行っていると思うが浜松土産としてぜひ県外の人にもスパの店を広めていきたい」

<月のパン屋さん 平出美香代表>
「今はお店の片隅にあって『知っている人だけが知っている』。もっと多くの人に知られることでバリエーションが増えるといいと思っている」

商談がまとまれば次は発信です。自らポップやポスターなどを作成し、商品の魅力を伝えるのもバイヤーの大事な仕事です。

<遠鉄百貨店バイヤー 伊藤彩ほりさん>
「私たちスタッフの思いも売り場でお客さんに伝えることで、よりお客様に伝わる商品になると思っています」

今回、スパカリを販売したのは遠鉄百貨店で開かれたスイーツのイベント会場。店のスタッフとバイヤーが一緒にスパカリをPRします。

<試食した人>
「おいしい、どんどん進んじゃう」

懐かしの味「スパカリ」には世代を超えた魅力がありそう。手ごたえを得た高坂さんはさらなる商品の進化を目指しています。

<遠鉄百貨店バイヤー 高坂美帆さん>
「今後浜松のいろんなメーカーとお話ししてコラボ商品を作って、一緒に浜松を盛り上げていきたいと思います」

<寺坂元貴記者>
地元を応援することにはたくさんのメリットがあります。
ひとつめは差別化です。売れ筋の商品を並べようとすると、どうしてもどの百貨店も同じような商品が並んでしまいますが、地元感を出すことで個性が生まれます。
プロデュースした商品がヒットすれば地域の経済が潤い、それが目玉になれば来客が増加する期待がでてきます。遠鉄百貨店の中村常務は「地域と一緒に進化したい」と豊富を述べています。百貨店はその名の通り100のものを売る場所だったのですが、これからは100の価値を生んでいかなければならないと取材を通して感じました。

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