屋内にいても熱中症になる人が後を絶たない。リスクが高いとされる1人暮らしのお年寄りだけでなく、複数人で暮らしていた自宅でも死亡する例が発生した。有識者は「残暑がしばらく続く。くれぐれも注意を」と呼びかける。(米田怜央)

親子とみられる2人が死亡していた住宅に回覧された熱中症の注意喚起のチラシ=東京都目黒区で

◆つい最近まで元気そうだったのに…

 「2人で暮らしていたから心配していなかった…」。東京都江東区の都営アパートに暮らす女性(75)がうつむいた。  このアパートの一室で8日、80~90代の夫婦とみられる男女が亡くなっているのが見つかった。城東署によると、死因はいずれも熱中症とみられる。室内にエアコンはあったが、発見時には動いておらず、作動しなくなったリモコンが机の引き出しにしまってあった。女性によると、亡くなった男性は7月下旬に他の住民との掃除に参加し、元気そうな様子だった。  目黒区の住宅でも8月13日、男女の遺体が見つかった。碑文谷署によると、2人で暮らす70代の母親と40代の息子とみられ、熱中症だった可能性がある。扇風機は回っていたが、エアコンは動いていなかった。近所の80代男性によると、2人の家にも回った直近の回覧板に、熱中症への警戒を求めるチラシが入っていた。

◆熱中症で死亡した人の大半が「屋内」

 総務省消防庁によると、昨年5~9月に熱中症で搬送された全国の9万1467人のうち、発生場所の4割が住居で、1割弱が屋内の公共スペースだった。東京都監察医務院の速報値では、東京23区で今年7月、熱中症で死亡した123人のうち121人が屋内にいた。  医療従事者らでつくる「熱中症予防啓発ネットワーク」代表の犬飼公一医師は「熱中症は、体温がコントロールされている状態から20分程度で危険な状態になり得る」と指摘する。熱への感度が低く、汗をかきにくい高齢者は「暑さを感じる前に意識を失う例が多い。2人暮らしでも、助けを呼ぶ前に倒れかねない」と懸念する。  熱中症は7、8月に集中するが、昨年は9月にも全国で9000人以上が搬送された。犬飼さんは「残暑が続く上、気温が下がっても体調不良だと発症リスクは上がる。エアコンの使用と水分補給を続けてほしい」と訴える。   ◇  ◇

◆シェルターやスポットも活用を

 東京消防庁は、冷房が効き一般に開放されて涼むことができる場所として、区市町村が指定した「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」1415カ所と、都が登録した「TOKYOクールシェアスポット」1491カ所を、公式アプリとホームページの地図上に表示している。  シェルターとスポットは公共施設や薬局など民間施設で、開館時間に合わせて利用できる。シェルターの一部は環境省の「熱中症特別警戒アラート」が発表された場合に利用できる。各施設を都熱中症対策ポータルサイトでも公表している。 

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