島根大学に、焼畑農法に取り組むサークルがあります。
サークルの名前は、「里山焼かんかね?」。ちょっと危ない名前な感じもしますが、学生たちはいたって真剣。その取り組みを取材しました。


勢いよく燃えるススキや、切り倒したクルミの木。ここは、島根県奥出雲町八川地区。この日、島根大学のサークル「里山焼かんかね?」のメンバーがこの土地に火を入れ、焼畑を行いました。

焼畑農法は、草や木を焼き払い、残った灰を肥料にして、作物を栽培する農法。
火を入れることで、害虫なども焼き払い、作物に良い土壌を作ることができます。

島根大学サークル「里山焼かんかね?」木津たお さん
「ゆっくり火が回りつつ、あまり風にもなびかずに、土を焼いていってくれているので、土も豊かになってるじゃないかなと思う。全国で、ここまで大々的に焼畑をしているサークルはないんじゃないですかね」

「ここが焼く場所で、ここが防火帯」

島根大学松江キャンパスで活動するサークル「里山焼かんかね?」。
現在、メンバーはおよそ40人。その活動の目的は?

島根大学サークル「里山焼かんかね?」木津たお さん
「もともと畑だったところとか、人が管理していたところで、今は、放棄されてしまったところを、もう一度、焼畑を通して、再生していこうと」

島根大学で林学を教える小池名誉教授のもと、サークルのメンバーは、焼畑農法を通して、中山間地域の課題解決に挑戦しています。

島根大学 小池浩一郎 名誉教授
「たくさんの燃料がないと、土が焼けないんで、なるべく、上に木とかいろんなものがあった方がいいんですけど、ここはススキがちょっとあるだけで」

サークルメンバー
「聞いたことのない活動をしているということだったので、興味があった」
「実家が山間部にあって、ここの部活で、森林の管理などが学べたらいいかなと思って、活動に参加した」

焼畑の仕方についてしっかり学んだメンバーは、この日、奥出雲町で今年2か所目となる焼畑に臨みました。

この場所は、国の事業として農業推進のために開墾された国営開発農地。
放牧地として利用されていましたが、10年以上前に耕作放棄され、そのままになっていました。

奥出雲町農業振興課 糸原和弘 課長
「国営開発農地について、遊休化しているところが増えているというのが現状。そういったことを町としても解消していきたいという考えでやっているが、若い方がしていただけると、いろんなところに波及効果も生まれることも期待して、町の方でもしっかり取り組んでいきたいと考えている」

高齢化、過疎化が進む中山間地域では、荒廃農地が課題となっています。そうした大きな課題とも向き合うのが、サークル「里山焼かんかね?」のメンバーです。

島根大学サークル「里山焼かんかね?」木津たお さん
「(焼畑農法は)肥料もいらないし、除草もあまり手間がかからないし、害虫もつかない、しかも耕す必要もないので、耕作放棄地とか大変になってしまったようなところでも、あまり手を掛けずに農業ができる点で、島根に合っていると思う」

現在、奥出雲町の国営開発農地で遊休化している土地は、82.8ヘクタール。年々、増加傾向にあります。

そんな中、奥出雲町と島根大学の学生がタッグを組み、焼畑農法の実証実験に取り組みました。

火入れをしてからおよそ1時間半。
ススキが生い茂っていた土地は燃えた灰で真っ黒になりました。

島根大学 小池浩一郎 名誉教授
「(小さな虫が)低空飛行してブンブン飛んでいる。場所によっては、特有のちょっと甘いような匂いがする。虫は匂いに敏感だから、土がこんがり焼けて、有機物がガスみたいになって、その匂いで、どうも来るみたいだなと」

焼畑を終え、再生された土地にメンバーが撒くのは奥出雲町に残る希少品種「横田小そば」の種。この地では、古く、たたら製鉄に使う木炭用の木材を伐採した後、焼畑をし、ソバを育てていたといいます。

島根大学サークル「里山焼かんかね?」木津たお さん
「無事に焼けてよかった。この後、みんなの撒いたソバが実って、来年につながればいいなと思う」

ソバの収穫は10月末ごろの予定。若者たちが着けた火種が、中山間地域の課題解決につながるか。島大サークル「里山焼かんかね?」の今後の活動に期待が高まります。

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