夏休みも残りわずかです。この期間、ラジオ体操をする子どもたちの姿を見かけた人もいらっしゃると思います。およそ100年前に始まったラジオ体操、時代とともに変化しています。令和の風景を取材しました。

(記者)「午前6時半前、暑さの中、ラジオ体操のために子どもたちが集まってきています」

鹿児島市谷山中央の田辺公園ではこの夏、近所の子どもや高齢者50人以上が集まり、ラジオ体操を続けています。

ラジオ体操は1928年、当時アメリカでラジオ放送されていた健康体操をもとに、旧逓信省簡易保険局が考案、NHKのラジオ放送で始まりました。

その後、1930年に警視庁万世橋署の巡査が夏休みを健康に楽しく過ごせるようにと、子どもたちを空き地に集めて始めたことで、全国に広まったといわれています。

(田辺町内会・宮田博文会長)「伝統だからやめてはいけないというのもある」

田辺町内会長の宮田博文さん。健康のために9年前から参加しています。

町内会では20年以上、夏休みのラジオ体操を続けていて、コロナ禍でも中止することなく、お互いの距離を取りながら続けてきました。

体操の後にはお馴染みの光景が。カードにスタンプをもらうため、子どもたちが列をつくります。

(小5)「楽しかった。友達も来ているし、頑張ろうと思ってきている」

(小3)「スタンプもらえるから(頑張る)」

(小4)「たまにお菓子がもらえる」

保護者も早朝から体を動かすメリットや地域とのつながりを感じています。

(保護者)「どうしても夏休みはだらだらしてしまうので、1日のリズムをつくる意味ではすごくいい。(地域との)関わりを持てる交流の場になっていると思う」

(田辺町内会・宮田博文会長)「寝ぼけ眼の子、あくびしている子、椅子に座って傍観している子、それも楽しみの1つ」

専門家は、成長期の子どもの発育にも効果が期待できると話します。

(鹿屋体育大学スポーツ人文・応用社会科学系 北村尚浩教授)「安静にしている時の4倍から4.5倍の運動強度がある。早歩きと同じくらいの運動強度。成長期の子どもにとっては骨の発育にも効果が期待できる」

一方で、ラジオ体操をやめる地域も増えています。屋久島町安房地区では、少子化やスタッフの確保が難しくなったことから、10年ほど前に夏休みのラジオ体操を中止しました。

(15年前にラジオ体操を運営していた山田さとみさん)「負担感と比べたときに時代の流れは仕方がない。違う期間で違うタイミングでできると負担感なく続けられると思う」

また、鹿屋市高須町では、小学校の閉校に伴い行事が減ったことをきっかけに、4年前から縮小。夏休みの前半と後半で1日ずつ行っています。

(小6)「(縮小で)寂しい。健康のためにもやった方がいいと思う」

(高須町内会・上原義史会長)「朝の大事なスタートが地域で始められるのはいいこと。ぽつぽつでもやっていけたら」

時代とともに形を変えるラジオ体操、街の人は…

(子ども)「健康みたいなイメージ。毎日行っていると達成感がある」

(保護者)「(印象に残るのは)手足を伸ばしてできるのですべて。物騒だったり、心配もあったり、子どもだけで行かせるのが以前は普通だったけど心配」

(20代夫婦)「夫:行ってない」「妻:皆勤賞だった。夏休みの醍醐味で、あった方がいい」

(70代)「義務だった、子供の立場からは。意義を見出せなくなって、やめていこうという風潮になったのでは」

簡易保険加入者協会が2021年に行った調査では、全国の小学校におけるラジオ体操の実施率は63.2%で、2004年と比べるとおよそ13ポイント下がっています。

(鹿屋体育大学スポーツ人文・応用社会科学系 北村尚浩教授)「少子化やライフスタイルの多様化を考えると、縮小していくのもやむを得ない。一方で地域の人間関係が希薄化している。ラジオ体操を含めた地域行事のあり方を地域の人が考えていくことが大事だと思う」

(田辺町内会・宮田博文会長)「将来的にきつさを乗り越えた子たちは、困難にぶち当たっても乗り越えていくだろうと期待している」

人々の健康だけでなく、地域のつながりを支えてきたラジオ体操。およそ100年の時を経て、行うかどうかや頻度について、地域みんなで考えていくことが必要となりそうです。

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