防衛力の南西シフトに合わせ重要度を増している長崎県佐世保の自衛隊部隊。しかし佐世保で運用する「岸壁」は位置や大きさ、数に関して様々な問題を抱えています。この問題を一気に解決する《過去に例がない新しい基地施設》の整備が進められています。

佐世保市に拠点をおく陸上自衛隊水陸起動団。この日「特殊車両」の積み込み作業が行われていました。その車両とは「水陸両用車AAV7」

Q 記者「何台運ぶんですか?」
自衛官「3ピストンで5台運びます」

陸上自衛隊水陸機動団、「水陸両用車AAV7」はその代表的な装備品です。万一他国に島を侵略された場合、奪還作戦に投入される車両で海と陸両方を進むことができます。

全国の自衛隊で配備されているのは佐世保の水陸機動団だけ。しかし有事に素早く対応する上での《ある課題》を抱えています。

有事が起きてもすぐには…

記者「水陸機動団の象徴ともいえる水陸両用車ですが、ここ相浦駐屯地では直接輸送艦に積む岸壁がありません。なので島での訓練のたびに輸送艦が待機している岸壁まで運ぶ作業が発生します」

自衛官「福石町を右折、競輪場のそばを通り、海上自衛隊の倉島岸壁のほうにまいりたいと思います」

この日行われていたのは輸送艦がある岸壁までの《陸上輸送》でした。水陸両用車を積んだ大型トレーラーは夜、駐屯地を出発。陸上も走ることができる水陸両用車ですが、単独で一般道を走るには様々な制限があり、通常は大型トレーラーで運びます。

さらにその大型トレーラーも、水陸両用車を積むと重量が法律の基準を超えるため、通行は午後9時~午前6時の時間帯に限られます。そのため夜間に輸送が行われているのです。

現状では「やむを得ない」けれど…

佐世保の市街地を経由し、およそ30分で海上自衛隊の倉島岸壁に到着。この一連の作業について、現場の指揮官は「現状で避けられない負担」だと言います。

陸自水陸機動団 北島一団長:
「AAV7の輸送はトレーラーに積載して行い、時間もかかりますし隊員にも負担をかけていますが、現在の陸上自衛隊の駐屯地、そして港の配置上これはやむを得ないものと認識しています」

水陸両用車がいま置かれている相浦駐屯地から倉島岸壁まではおよそ8キロ。この距離を運び、海上自衛隊の輸送艦に積むことでようやく島へと向かうことができます。《保管場所》と事実上の《出発拠点》の岸壁が離れているため、その都度必要となる輸送。これは訓練だけでなく有事の際にも必要となります。

陸自水陸機動団 北島一団長:
「AAV7をトレーラーに積載をして移動させ、そしてそれをまたおろすというのは一定の時間かかりますので、これはより早めることができれば望ましいという風に認識しています」

「岸壁問題」それは海上自衛隊にもー

岸壁が「ない」という現実

記者:「私の後ろに停泊しているのが護衛艦「かが」です。海上自衛隊で最大規模の護衛艦ですが、現在の佐世保港にはこの「かが」が接岸できる自衛隊の専用岸壁がなく《港の中に停泊》して運用をしているのが現状です」

今年春、佐世保に寄港した「かが」の同型艦「いずも」は、一般公開もあったため接岸していました。しかしこの岸壁は自衛隊のものではなく民間の岸壁。「いずも」と「かが」の大きさに対応できる《自衛隊専用岸壁》が今の佐世保にはありません。

海上自衛隊OB 香田洋二さん:
「整備が艦艇の大型化には追いついていないというのも現状だと思います」

こう語るのは佐世保地方総監も務めた海上自衛隊OBの香田洋二さんです。

海上自衛隊OB 香田洋二さん:
「係留施設や港湾施設、それから基地機能の面では非常に整備が遅れてきた。強度的にも大きな船についてはなかなか対応し難いということ」

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