シリーズ「現場から、」です。海洋進出を進める中国を念頭に、政府が防衛力強化を進めるいわゆる“南西シフト”。近年、「国境の島」として軍事的な動きが活発化する沖縄県与那国島の今を取材しました。

在沖米軍トップ ロジャー・ターナー中将
「日米同盟は世界で最も強力な同盟の一つであり、日本や他の同盟国に対する侵略に、迅速に対応する準備ができています」

陸上自衛隊西部方面隊 荒井正芳 総監
「島しょ防衛作戦における日米同盟の実効性・信頼性を向上させる上で大変有意義であり、必要不可欠な訓練であります」

先月から今月にかけて11日間、九州・沖縄の各地で実施された日米共同訓練。日米が連携強化をアピールする会見の地に選んだのが与那国島でした。

日本最西端の沖縄県与那国島。国内で最も遅い時間に沈む夕日のおよそ111キロ先に台湾があります。

人口およそ1700人の「国境の島」はたびたび、日米の軍事的な思惑に翻弄されてきました。

記者
「アメリカ海軍の掃海艦が民間の港、祖納港に入港しました」

その思惑が表面化したのは、今から17年前。沖縄の本土復帰後初めて、アメリカ海軍の掃海艦が与那国島に入港。

戦没者を悼む「慰霊の日」翌日の強行に、全県的な反発がありました。

在沖米総領事館 ケビン・メア総領事(当時)
「この地域も、日本の防衛に重要な地域」

当時、アメリカ海軍は入港目的を「友好親善のため」としていましたが、のちに有事を念頭にした軍事的な港湾利用の調査が目的だったことが明らかになっています。

その後、与那国島には自衛隊の駐屯地が開設され、2年前に初めて、日米が共同で訓練を行いました。

「少し不安。静かにやった方がいい。戦争はもうこりごり」
「訓練しておかないと、突然来たときに困るからしたほうがいい」

そして、現在、与那国駐屯地には当時の説明になかったミサイル部隊の配備が計画され、今年5月にはアメリカのエマニュエル駐日大使が視察へ。

なし崩し的に訓練や部隊が増えていく現状に、住民の有志は疑問の声をあげています。

猪股哲さん
「“抑止力”は漠然とした国や国体は守れるのかもしれないが、住民の命を守るものではない」

小嶺博泉さん
「(沖縄・先島は)地理的な特性、地政学的なところから、『(安全保障の)責任を負わなければならない』と言われるが、私たちも日本国民ですよね」

軍事的な連携を加速させていく大国を前に、小さな島の不安や懸念は置き去りにされています。

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