自民党総裁選への「不出馬」を表明した岸田総理。およそ3年間にわたった、その政権を検証する。支持率低下の要因となった、旧統一教会との関係や政治とカネの問題。説明責任は果たされていると言えるのだろうか。

岸田政権3年を検証 旧統一教会問題で支持率が急落

14日、退陣を明らかにした岸田文雄総理。「ポスト岸田」に意欲を示す1人が茂木敏充幹事長だ。岸田総理が不出馬を表明した当日、麻生太郎副総裁と会談を行い、対応を協議した。

他にも、石破茂元幹事長や小林鷹之前経済安保担当大臣ら、異例の数の議員が出馬への意欲を見せている。

岸田政権のおよそ3年間、支持率が下落し政権の求心力が低下した局面は度々あった。

2022年7月、安倍元総理銃撃事件。その後、多くの自民党議員と旧統一教会との関係が次々と明らかになると、支持率は急速に下落していった。

岸田総理
「真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体(旧統一教会)との関係を断つ」

しかし、この「関係を断つ」との宣言から9か月後、都内で行われた「新しい憲法を制定する推進大会」には来賓として駆けつけた岸田総理の姿が。

下村博文氏や中谷元氏といった大臣経験者も参加し、麻生副総裁のビデオメッセージも流された。

「関係を断つ」と宣言も…改憲集会に“信者が多数動員”か

報道特集はこの改憲集会に毎年、「旧統一教会の信者が多数動員されている」という4年分の情報を入手していた。

『今年も摂理機関本部関係で50名の動員を行うこととなりました。』

摂理機関とは、教祖・文鮮明氏の教え=「摂理」を実施する機関のこと。呼びかけていたのは「UPF=天宙平和連合」。8つの教団関連団体に合わせて53人を動員するノルマを課していた。

UPFは安倍元総理が生前、ビデオメッセージを送った関連団体だ。“現役”信者に、改憲集会の映像を確認してもらうと…

現役信者
「この人、教会の教会長ですね」
「彼、この人も本部関係の人です」

さらに…

現役信者
「ちょっと待って下さい、UPFの事務局の人だと思います」

このUPFの幹部は会場の整理を手伝い、岸田総理が使用するマイクの準備までしていた。

現役信者
「普通やらせないでしょう?いくらボランティアって言っても。だって変に爆弾を仕掛けられたりするから、相当信頼があるってことですよね」

旧統一教会が、改憲集会の運営に関わっているのか。会場にいたUPFの幹部に話を聞いた。

――どこから動員をかけられた?
「ノーコメントで。関係を絶ったからと言って、大会に参加しちゃいけないというのはない」

――ないです。ただ、普通に聞いているだけじゃなくて、壇上で机を並べたりとか、運営側として見えるので…
「でも一個人で手伝っちゃいけないですか?」

――いや、いいですけど。総理のマイクを一個人で手伝えるものですか?
「あの…手伝ってほしいって言われたから」

――誰から頼まれたんですか?
「だから、運営している人たちじゃないですか」

幹部は「旧統一教会が運営に関わっているのではないか」という質問には答えなかった。この改憲集会を見ていた元2世信者の男性に話を聞くことができた。

元2世信者
「ここですね。この集会の中で統一教会の信者が動員されていた。私はその場にいました」

元2世信者は、親が献金を続けていたことに苦しめられ、教団から離れた後も『教団と政治家との関係』を調べている。

――(岸田総理が)説明責任は果たしたと思われますか?
元2世信者

「果たしていませんね。岸田首相ご自身の統一教会との関わりの報道も出ましたけど、それに対して、しっかりとした説明はありませんでした」

岸田総理については、過去に自民党本部でUPFジャパンの梶栗正義議長と一緒に写った写真が2023年12月に明るみに出るなど、教団とのかかわりが指摘されていた。

さらに2024年2月、解散命令請求に関わる盛山正仁文科大臣が、教団側と、事実上の「政策協定」にあたる「推薦確認書」に署名していたことが明らかになった。しかし、岸田総理は、盛山氏を更迭しなかった。

元2世信者は、今回の岸田総理の退陣について…

元2世信者
「私は逃げたと思っています。これでは何も解決されないし、辞めることで責任を取ったと言われるのは、政治家だけだと思います。

追及されれば、表では新しい法律を作ったり、声明を出してみたり、姿・形だけ見せてきたんですけど、実効性のある動きっていうのは全く見られなかったと思います」

特に、元2世信者が憤っているのは、被害者救済を目的として作られた法律の“不十分さ”だ。

信者の家族が、教団に返金を求める際のハードルは高く、『今も熱心な信者である両親が行った献金』を取り戻すことはできていないという。

元2世信者
「家族の取消権であったり、そのような物が一切認められなかったので。私のお金は奪われて献金されてしまったようなものです。大学にも行けませんでした。子どもの金に手をつけて献金している、その本人たちが返金要求するって、とても難しいです。

政治と宗教の問題というのが、まだ何も解決されていない。なので、自民党のまま、この政権を続けていくのかどうかというのが、国民に対して問われるべき。統一教会との問題というのは、自民党全体の議員が関わってきた“構造的な問題”でもあると思います」

「説明というものからは逃れられない」 自民党議員からも厳しい声

2022年9月に自民党は党所属の国会議員379人のうち、180人が旧統一教会と関わりがあったと公表した。

自らも教団との関連が指摘される会合に出席していた津島淳衆院議員。岸田総理が不出馬を表明した翌日に取材に答えた。

自民党 津島淳 衆議院議員
「びっくりしたんです。最後まで再選目指して、色んな手立てを講じられるだろう、と思っていた」

津島議員は2024年6月、裏金事件の説明責任をめぐって、党内で公然と岸田総理を批判した。

津島議員
「総裁自らお話しすべきではないか。誰かが言って、そういう場を設けてもらうのではなくて、自らが求めて、皆さんにお話ししたい、釈明したい。そういう心からの思いを発するべきではないか」

津島議員は、岸田総理が退陣を表明しても、説明責任は果たされないままだと指摘した。

津島議員は2024年6月、裏金事件の説明責任をめぐって、党内で公然と岸田総理を批判した。

津島議員
「総裁自らお話しすべきではないか。誰かが言って、そういう場を設けてもらうのではなくて、自らが求めて、皆さんにお話ししたい、釈明したい。そういう心からの思いを発するべきではないか」

津島議員は、岸田総理が退陣を表明しても、説明責任は果たされないままだと指摘した。

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