障がい者向けグループホームを経営していた身でありながら、入所女性2人に常習的に性的虐待に及んでいた男。法廷では “犯行に至ったのは自分の弱さゆえだった” という旨の供述を繰り返した。検察側は「被害者らを性欲のはけ口として扱い、人格を著しく蹂躙する犯行」と糾弾し、懲役10年を求刑した。

知的障害の女性2人に性的暴行・わいせつ行為 みだらな姿をスマホで撮影も

起訴状によると、大阪府の塩本裕治被告(64)は2022年から今年1月にかけ、自らが経営していた障がい者向けグループホームの入所女性2人に対し、体を触る・なめるなどのわいせつな行為をしたり、陰部に指を入れるなどの性的暴行を加えたりしたとして、不同意性交等・不同意わいせつ・準強制わいせつの罪に問われている。

さらに、その女性2人をみだらな姿にさせ、自らのスマートフォンで撮影したとして性的姿態等撮影の罪にも問われている。

被害女性2人は事件当時18歳~20歳。1人は中度、もう1人は重度の知的障害がある。

検察官の冒頭陳述や論告によれば、塩本被告は遅くとも2022年5月頃から、中度知的障害がある被害女性に対する性的虐待を開始。最初は髪の毛や肩、腰などに触れる程度だったが、徐々に犯行をエスカレートさせていった。勤務時間中にドライブに連れ出し、体を触った場面もあったという。

重度知的障害がある被害女性は、去年9月頃にグループホームに入所したが、その直後に塩本被告から被害を受けた。

障害がない人に比べ、意思疎通が難しい被害女性らをターゲットにした卑劣な犯行に言葉を失う。立ち止まる場面はなかったのだろうか…?

被告「強いて言えば、自分が弱かったのだと思う」

8月13日の大阪地裁堺支部での公判。被告人質問で塩本被告は、“ケガをした際に理学療法士に真摯に対応してもらったので、自分もケアの仕事に携わりたいと思った” と、業界に入った時の純粋な思いを振り返った。

事件については起訴内容を認めたが、“なぜ犯行に及んでしまったのかは分からない” “自分の弱さだったと思う”という旨の供述が目立った。

(8月13日の被告人質問)
塩本裕治被告
「いま考えると、なぜ当時そんなことをしてしまったのかは分かりません。強いて言えば、自分が弱かったのだと思います」

「いやだと言われないことに対して、同意を得ていると勘違いしていました。いまは、障害があるから意思表示できなかったのだと思います」
「自分のたががはずれてしまっていた。越えてはいけない所を越えてしまっていた」

検察官「いろいろな入所者がいる中で、なぜAさん(重度知的障害がある被害女性)とBさん(中度知的障害がある被害女性)だったのか?」
被告 「強いて言えば、(着替えを手伝うなど)直接支援に関わる機会が、特にBさんは多かったので…」
検察官「撮影行為までした理由は?」
被告 「………そんなに大きな理由はないです」

塩本被告は、グループホームでの夜勤中に部屋に立ち入り犯行に及んでいたが、“率先して夜勤のシフトに入るというより、入れる人がいないから入るという状況だった”と説明した。

さらに塩本被告は、“被害者らが拒否反応を示した時は性的な行為をストップした” “一連の行為すべてをやめてほしいという旨だとは捉えなかった”と供述する場面もあった。

「被害者らの意思を一顧だにせず、自己の性欲を満たす道具として扱った」求刑は懲役10年

検察官は論告で、「被害者らの意思を一顧だにせず、自己の性欲を満たす道具、性欲のはけ口として扱い、人格を著しく蹂躙する犯行で極めて悪質」「青年期を迎える多感な時期に、これほどまでに甚大な被害を受けたことは、将来における健全な心身の生育にも多大な悪影響を与えることが必至」と最大限の言葉で糾弾。懲役10年を求刑した。

塩本被告の最終陳述は、次の通りだった。

「本当に本当にすべての方に対して申し訳なかったと思っています。どんな言葉を述べればいいか、想像だにできません。今後生涯をかけて、反省と自分のできる限りの償いをしていきたいと思っています」

判決は9月に言い渡される。

(MBS大阪司法担当 松本陸)

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