夏休みの自由研究にもオススメのスポット魚津埋没林博物館を紹介します。埋没林は文字通り「埋もれた林」のこと。およそ2000年前の木の根っこがほとんど当時のまま見つかりました。なぜ腐ることなく見つかったのか…なぜ国の天然記念物にも指定されたのか…埋没林を巡る謎を館長に聞きました。
魚津漁港のすぐそばにまるで宇宙船のような奇抜な建物があります。魚津埋没林博物館です。
埋没林は「森の化石」とも呼ばれ、火山活動や河川の氾濫など何らかの理由で地中に埋まって保存された森林のことをいいます。
この博物館には神秘的な雰囲気が漂う11点の埋没林が展示されています。どのくらい前の木なのでしょうか。
魚津埋没林博物館 石須秀知館長:「現在ではね。放射線の年代測定がされてまして、ほぼ2000年前のものという形でなってますね」「この辺り一帯が、そういうスギ林があって…」
日本各地で埋没林は発見されていますが、これだけ大規模に展示している施設は全国的にも珍しいということです。
なぜ魚津で埋没林が見つかったのでしょうか…。
石須館長:「これ昭和の初期に魚津港の建設のときに出土した埋没林の実物です」
埋没林が見つかった1930年頃。こちらはその当時の様子を再現した模型です。
1989年に発掘調査が行われそのまま展示…
当時、周囲は広い砂浜で、波打ち際周辺に木の株のようなものがあることは知られていましたが、あまり注目されていませんでした。
そんななか魚津港の建設工事がはじまると…。
石須館長:「埋没林の根っこといいますか、根かぶといいますか、こういったのが200個以上出てきた」
工事現場で見つかった200個以上の根っこ…。
この根っこはなんなのか、いち早く調査を行ったのが当時の魚津中学校の教諭・山家基治さんでした。
石須館長:「魚津港の建設で200個以上こんな木の根っこが出てきたといっても、それの意味をちゃんと理解できる方がいなければ、もしかしたら、そのまま撤去して、工事が進められちゃった可能性もなくはないかなというところですね」
他の研究者たちも次々と魚津を訪れ日本で初めて埋没林についての詳しい調査が行われました。
発掘調査では木の根っこを大切に掘り出している様子がみてとれます。
根っこの周囲からは当時の植物の種や花粉昆虫などもみつかり、当時の様子を知る貴重な資料となっています。
また、周辺から縄文土器が発見され、埋没林が埋まったのがいつごろか推測することができたといいます。
ドーム館では発掘調査でみつかった埋没林が、当時みつかった場所にそのまま埋没林が展示されています。
豊富な地下水により「密閉状態」が保たれた
石須館長:「ここに海抜0メートルと書いてありますが、このラインが現在の海水面の高さですね。ですから、このフロアは海面下という形になります」「木が根を張って生きていた頃はそこは陸地だった。海面下ではなかったということがわかるんです」
埋没林が見つかったのは今の海水面よりも低い位置でした。なぜ埋没林が海抜0メートルよりも低い位置で見つかったのでしょうか。
石須館長:「その原因は、何だったのかというところが気になるんですが…。解釈の仕方は2通りあって、海面が上がったのか土地が沈んだのか」「今の学説では、海面の方が、上下動したというふうなことで考えられています」
今よりも気温が低く、海面が低かった時代にスギの原生林が誕生。その後、気候が温暖化し海面があがったという説が有力ではあるようですが…。
何らかの地盤変動で地面が下がったという説も否定はされておらず、海面が上がったのか土地が沈んだのかまだ明確には解明されていないそうです。
石須館長:「地殻変動にして沈んだにしろ、海面の変動で沈んだにしろ、いずれにしても、そういう過去にそういう大きな変化があったということを埋没林の存在がね。語ってくれているわけです」
過去の変化を伺えるものは他にも。
石須館長:「ここを発掘したときの地中の地層の断面といいますかね。ですけども、見ての通り、石がたくさん含まれてます。で、細かい部分は砂です。これは、片貝川が氾濫を起こしてその洪水で運ばれてきた。砂礫層と言われますけども、砂や石でできている地層です」
埋没林はこのような砂や石でできた地層から見つかりました。
石須館長:「地下水が豊富に流れるということで、それが埋没林を守ってくれてたというふうに考えられています」
「砂や石でできた地層」と「豊富な地下水」によって空気に触れることなく「密閉状態」が保たれていたことが、埋没林が2000年以上前から腐ることなく残っていた大きな要因として考えられています。
埋没林以外にも眠っているものが…
石須館長:「砂礫層、洪水で一気に運ばれてきたようなものになりますから、地上で木材が、長期間、空気にさらされるよりは、一気に埋められた方が良いと思われますので、おそらく、そういう、河川の氾濫によって、割と短期間のうちに、埋められていたというのも一つ要因かと思います」
博物館で一番大きな埋没林が展示されている水中展示館は、ポンプで汲み上げた地下水で満たされています。発掘当時の地面とも繋がっているため、自然の湧水が出ている様子もみることができます。
石須館長:「完全に埋まった状態で地下水が供給されて密閉されているのとは、ちょっと環境は変わりますけれども、なるべく、その地下水とともにあった方がいいんじゃないかということで当時考えられた保存方法ですね」
なるべく埋没林を当時のままの残そうという先人の思いが詰まった水中での展示方法は、博物館が開館した70年ほど前から続いている展示方法だということです。
地中レーダー探査の結果、博物館の敷地には埋没林がまだまだ地中に眠っていることがわかっています。
石須館長:「魚津埋没林というのは、国の特別天然記念物という文化財に指定されてるんですが、その指定の仕方は、根っこそのものではなくて、それが埋まってる土地に対する指定なんですね」「国宝同格の土地の上を歩けるという場所になります」
色々な発見と歴史に出会える魚埋没林博物館にこの夏、是非行ってみてはいかがでしょうか。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。