日向灘でマグニチュード(M)7.1の地震が発生し、南海トラフでの「巨大地震注意」の臨時情報が発表された8日から15日にかけて、紀伊半島などで「深部低周波地震」と呼ばれる微小な地震活動と、それに伴いプレート境界が緩やかにずれる「短期的ゆっくり滑り」という地殻変動が起きていた。気象庁によると、過去にも同様な現象が繰り返し起きており、特に異常な状況ではないという。(宇佐見昭彦)

◆プレートの境界がゆっくり滑ったとみられる

 今回の変動をとらえたのは三重県熊野市、津市、愛知県田原市、西尾市などに気象庁や産業技術総合研究所が設置したひずみ計や傾斜計。地下数十キロの深さで、フィリピン海プレートと陸側のプレートの境界がゆっくり滑ったとみられる。  紀伊半島で最も大きく滑った領域(9〜10日に観測)では、モーメントマグニチュード(Mw)と呼ばれる指標で表す「滑りの規模」がMw5.9と見積もられた。14〜15日には愛知県北東部から長野県南部にかけての領域でも、Mw5.5程度の滑りが見られた。

8日、日向灘を震源に発生した地震を受けて気象庁が開いた記者会見(木戸佑撮影)

 これらの短期的ゆっくり滑りとほぼ同時に、紀伊半島の地下では8日以降、深部低周波地震(揺れの周期が長い地震)が多数発生。地震活動や滑りの発生領域は、奈良・三重県境付近から伊勢湾、さらに長野県南部へと北東に場所を移しながら続いた。

◆「これまでの範疇から外れていない」と気象庁は説明

 こうした現象は、数カ月〜1年ほどの間隔で繰り返し発生しており、近年では2021年の終わりごろや23年半ばにも、西側から北東側へ移動しながら続く一連の活動が起きていた。  気象庁の担当者は「短期的ゆっくり滑りの規模がこれまでより大きくなるとか、起きる場所が違うなどすれば別だが、今回の現象はこれまでの範疇(はんちゅう)から外れていない。Mw6台の前半ぐらいまでは従来の範疇だ」と説明した。 

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