「ふるさとの涼を求めて」と題して、鹿児島県内の涼やかな風景や食べ物をシリーズで紹介します。今回は伊佐市の渓谷とブルーベリージュースです。

伊佐市大口を流れる十曽川です。木漏れ日の中、清流がこだまします。

水源は、標高350メートルの奥十曽渓谷。原生林に覆われ、真夏でも最高気温は26度という涼しさです。豊かな緑と清らかな水で、森林浴の森100選・水源の森100選にも選ばれています。

渓谷から流れ下る十曽川の水は、一般的な川の水温よりも2~3度ほど冷たく、藻が繁殖しにくいことから、川底が透けるほどの透明度です。夏場は避暑スポットとして地元の人に親しまれています。

(高校生)
「冷たっ」「気持ちよすぎる。誰にも教えたくない。独り占めしたい。最高」

この夏、釣り堀もオープンしました。泳いでいるのは、ニジマス。いけすは、かつて水産試験場として使われていたもので、川内川上流漁業協同組合が22年ぶりに復活させしました。

(高校生)
「魚がかかった瞬間の重みが最高」

(子ども)
「(何匹いる?)5匹。楽しかった」

土日祝日限定で9月1日まで楽しめます。

下流に広がるのは、周囲4キロの人工の池、十曽池です。広場や水草庭園などが整備され、自然豊かな景勝地が広がります。

十曽池の近くに、7月から8月の2か月間だけオープンするブルーベリー農園があります。夏空のもと、2.5ヘクタールの畑に7品種のブルーベリーが艶やかに実っています。

冬場は氷点下になる伊佐市。この寒暖差が、大粒で甘いブルーベリーを育むといわれています。

(記者)「甘酸っぱいですね」
(園主・村中裕子さん)「初恋の味っていうかね。私もいろいろ食べたけれど、うちのブルーベリーにはかなわない」

園主の村中裕子さん(79)が目の前で作るブルーベリージュースは、農園の名物です。凍らせたブルーベリーが70粒以上入っています。

(記者)
「濃厚で、さわやかな甘みと酸味をダイレクトに感じます」

農園は、今年で36年目。伊佐の自然をいかして地域を活性化させたいと、夫・義久さんと立ち上げました。

(園主・村中裕子さん)
「(夫は)伊佐市のことを思っていて、郷土愛が強かった。ここの自然は買えないものだと、そればっかり言っていた。最初のころは台風がきたら苗が全部吹っ飛んでいた。探し集めて、また元の位置に植えたものだった」

夫婦二人三脚で作った農園。500株から始めたブルーベリーは、接ぎ木で一つ一つ数を増やし、今では3700株にまでなりました。

しかし、今年3月。義久さんは病気で亡くなりました。88歳でした。

(園主・村中裕子さん)
「仏前に今年の初実を供えた。残念だね、去年までは食べたのに、頑張るねという気持ちで。喧嘩もしたし怒られもしたけれど、あなたひとりでした。愛した人はと」

ひとりで迎えた、初めての夏。今年も、多くの人でにぎわいます。

(訪れた人)
「6年ぐらい夏休みに毎年来ている。今年も甘くて粒が大きくて最高」

「いつ来ても笑顔で迎えてくれる。来年も行こうと常に思って楽しみにしている」

(園主・村中裕子さん)
「杖ついてもでも開けますよ、がんばります」

ブルーベリーが繋ぐお客さんとのふれあいが、村中さんの生きがいになっています。

(園主・村中裕子さん)
「心が崩れるときも弱くなる時もあるけれど、お客様と会うと、懐かしさと頑張らないといけないんだ、待っている人がいるんだと気付かされる。この場所を守り、繋いでいくことが私の使命」

夫婦の愛情が込められた、青い宝石。この夏も、多くの人に涼と笑顔を届けます。

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