今月8日に発生した日向灘を震源とする最大震度6弱の地震に伴い「巨大地震注意」の南海トラフ臨時情報が発表されました。現在のところ、各地の観測データから巨大地震につながるプレート境界の異常は検出されていませんが、いつ起こってもおかくないといわれる南海トラフを震源とする巨大地震…。地震の専門家は、能登半島地震も南海トラフ地震の活動期の地震活動の一つとみています。

南海トラフ地震はおおむね100年から150年の間隔でくり返し発生し、過去の地震では、その前後に日本海側でも大きな地震が起きています。

前回南海トラフ地震が起こったのは1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震。発生から約80年が経過していて、今後30年以内に発生する確率が70から80%と切迫性が高い状態とされています。

南海トラフ地震の歴史をひも解いてみると北陸と関係する「ある特徴」が見えてきます。

富山大学・竹内章名誉教授:「南海トラフの地震は明応の地震(1498年)、慶長の地震(1605年)、宝永の地震(1707年)、安政の地震(1854年)、昭和の地震(1944年・1946年)と起きていますが、その地震の前後に内陸や日本海側で地震が起きています。(次の南海トラフ地震へは)20世紀の終わりに兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が起き、それ以降、最新活動期に入っているといわれています。その中で、日本海側では、鳥取県の地震だとか、2007年の能登半島地震とか、珠洲の群発地震もあり、能登半島地震が起きている」

過去に歴史上最大級の“地震による山崩れ”も

昭和の南海トラフ地震を見てみると、最初の地震から4年後、福井平野を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生。内陸で発生した都市直下型地震で、死者は3769人、全壊した住宅3万4000棟以上で、地震よる火災の発生で4100棟以上が焼失しました。

その前の南海トラフ地震は、安政の地震(1854年)。その4年後、富山県内では飛越地震が起こりました。震源は富山・岐阜の県境の跡津川断層で、地震の規模はマグニチュード7.1でした。

跡津川断層帯
跡津川断層を調査する竹内名誉教授

1858年に起きた飛越地震の被害について記録されているのが富山県立図書館が所蔵している「地水見聞録」です。中には、建物の倒壊や地面から水が噴き上がり、逃げ惑う人たちの絵が描かれていて、当時も液状化の被害があったことがうかがえます。

この地震で、「立山鳶崩れ」と呼ばれる大規模な斜面崩壊が発生。大量の土砂が常願寺川上流をせき止めました。この天然ダムはその後決壊し、下流の村々が洪水に襲われました。地震による山崩れとしては歴史上最大級です。

富山県立図書館
富山県立図書館蔵
富山県立図書館

歴史は繰り返されるのでしょうか?

糸魚川・静岡の活断層帯に続いている…

富山大学・竹内章名誉教授:「南海トラフは、活動期、静穏期、活動期、静穏期を繰り返してきていて、現在、最新活動期のまっただ中。そんな中で、今回の能登半島地震が起きています。南海トラフ地震後には日本海側の北陸でも数年間は活動期が続く。そうならなければ(活動期は)終わらない」

南海トラフ沿いのプレート境界では、ユーラシアプレートの下に徐々にフィリピン海プレートが沈み込んでいます。フィリピン海プレートに引きずられてユーラシアプレートも地下に潜りこみ、そのひずみが限界に達すると、はじけるように跳ね上がり、巨大地震と大津波が発生します。

過去の地震の例から、竹内名誉教授は、南海トラフの巨大地震から数年後、北陸地方で大きな地震が起きる可能性があると指摘します。

富山大学 竹内章名誉教授:「南海トラフの地震は西日本の太平洋側で起きるわけですけども、ユーラシアプレートは、糸魚川・静岡の活断層帯に続いていて、富山湾に入り、さらに、日本海の北の断層につながっていくわけですね。ですから、フィリピン海プレートで大きな地震が起きると連動して北陸にも地震が起きる」

注目すべきは、本州の中央部を真っ二つに貫く糸魚川-静岡構造線断層帯、いわゆる「糸静」です。糸静は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界にあり、長野県北部から山梨県南部にかけて延びる約158キロにわたる活断層帯です。

連動を起こすと、相当強い地震に…

富山大学 竹内章名誉教授:「糸静の全部が動いたら相当大きなマグニチュードになるわけですね。ごく一部が動いたのは、2014年の(長野県)神城断層地震。白馬村辺りの活断層が動いた。それは糸魚川静岡構造線断層帯のごく一部が動いたんですけど。南海トラフ地震で、今回の能登半島地震みたいに連動を起こすと、相当強い地震になってしまうということですよね」

糸静のごく一部が動いたという神城断層地震は、長野県白馬村と小谷村で震度6弱の揺れを観測。多数の負傷者を出したほか、全壊81棟含む2000棟以上の家屋に被害がでました。

災害の経験が少ない富山県民は、今回の能登半島地震から多くを学び備える必要があります。

富山大学・竹内章名誉教授:「富山は安心だという楽観ではなくて、警戒心をもって災害に備えることが大事だということを教えてくれている」

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