台風5号は、8月11日時点で日本の東を北上していて、次第に進路を西よりに変え、8月12日に東北地方に上陸する見込みです。

この台風の影響で、青森県、岩手県、宮城県では、11日夜から12日午前中にかけて、線状降水帯が発生する可能性があり、気象庁は、およそ半日前から知らせる予測情報を発表しています。線状降水帯が発生すると、大雨災害の発生する危険度が急激に高まります。

気象庁は、台風による大雨で、東北地方を中心に、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水、氾濫に厳重に警戒するよう呼びかけています。

台風によって線状降水帯が発生すると、どのような大雨が降って、災害につながるのでしょうか。過去の台風災害を例に見ていきます。

台風による線状降水帯 静岡県で過去に度々、発生

2022年9月、静岡県内に甚大な被害をもたらした台風15号では、気象庁から「線状降水帯」の発生情報が発表されました。

線状降水帯とは、発達した雨雲が次々と発生し直線状に並ぶ現象です。帯状に続くため、ほぼ同じ場所に、長い時間、大雨を降らせます。

2022年9月の台風15号では、静岡市駿河区で降り始めからの雨量が416.5ミリを記録し、1時間雨量では1974年の「七夕豪雨」を超える107ミリを観測しました。静岡市内では、巴川が氾濫するなどして、4400棟以上が床上まで浸水し、甚大な被害が出ました。

画像提供:静岡地方気象台

雨雲は静岡県内を覆うように発生し続けました。このときは、夜と早朝の2度、線状降水帯の発生情報が出ています。

線状降水帯の発生情報が発表されるときには、すでに自治体から避難指示が出ているような危険な状況。そこから避難所に向かうことでむしろ、被害に遭ってしまうおそれもあります。

気象台などが発表する「土砂災害警戒情報」や「氾濫危険情報」、自治体が発表する「避難指示」など、警戒レベル4、または警戒レベル4相当の情報を受けたら、線状降水帯などで記録的な大雨が降る前に、危険な場所からの避難を終えておくことが重要になります。

2023年には橋の崩落や内水氾濫で大きな被害

静岡県内では、2023年6月2日の台風2号による記録的豪雨でも、県西部と中部で
線状降水帯が発生しました。

この際も気象庁は、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いたことから、命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっているとして、厳重な警戒を呼びかけました。

この日、静岡県西部の森町では、観測史上最大となる448ミリの雨を記録。太田川にかかる橋の橋げたに上流からの流木が絡み、流れがせき止められた影響で、橋の一部と脇にある県道が崩落しました。

他にも、静岡県内では、土砂崩れや浸水が相次ぎ、堤防の決壊も発生。県内で男性2人が行方不明となり、1人は土砂崩れの現場で発見、もう1人は増水した川に流されたとみられ、2日後、自宅から約20キロ離れた海岸で見つかり、いずれも死亡が確認されました。

写真提供:視聴者

同じ日、静岡県東部の沼津市では、市街地に排水能力を超える多量の雨が降って浸水被害が起きる「内水氾濫」が発生しました。

水害には、大きく分けて「外水氾濫」と「内水氾濫」の2つがあります。河川が増水して水が堤防を越えたり、堤防が決壊したりすることで川の水があふれ出すのが「外水氾濫」。一方、排水能力を超える大量の雨が降った時、雨水を大きな川に流せなくなり水が街にあふれるのが「内水氾濫」です。

線状降水帯の発生など、過去に経験がない記録的な大雨が長時間降るケースでは、「内水氾濫」にも警戒が必要です。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。