南海トラフ地震臨時情報発令から一夜明けた9日、海辺で海水浴を楽しむ人たち=千葉県いすみ市の大原海水浴場で

 8日に気象庁が初めて発令した南海トラフ地震臨時情報。千葉県内では同地震に備えて沿岸部の18市町村が「防災対策推進地域」に指定されており、一部の自治体は津波に備えた対応に追われる。臨時情報発令後、1週間以内に巨大地震が発生する危険度は「数百回に1回」程度とされるが、いつ来るかわからないからこそ「できる備え」が求められている。(山本哲正、平野梓、長屋文太)  同地域に指定されているいすみ市の大原海水浴場を9日に訪れると、浮輪で遊泳を楽しむ子どもらの姿が見られた。ライフセーバーの女性は「南海トラフの影響かは分からないが、客は昨日の半分程度」と話す。  沿岸部の一部の自治体は、臨時情報を受けて対応に追われている。  南房総市は、8日夜に市民を対象にした安全安心メールで地震に備えるよう注意を呼びかけた。観光プロモーション課では9日朝、市内12カ所の海水浴場に、ライフセーバーが来場者への注意喚起をするよう連絡した。  同市観光協会によると、観光情報サイト「南房総いいとこどり」の海水浴場情報にも、「事前に避難場所及び避難経路を確認して」と掲載。観光インフォメーションセンターには宿泊関連の問い合わせはなく、海水浴を予定する客から「予定通り開設しているか」という確認の電話が数件あったという。  館山市も8日夜に市民向けのメールで日頃の備えを確認するよう呼びかけた。危機管理課によると、これまで市には「旅行を予定しているがどうしたらいいか」との問い合わせがあり、「高台なら大丈夫。市ホームページのハザードマップで確認してほしい」と回答したという。

◆防災士に聞く「今できること」

 南海トラフ地震臨時情報の発令を受けて自治体は住民に備えの確認を呼びかけているが、今できることは何か。鎌ケ谷市在住のNPO法人首都圏防災士連絡会理事で防災士の堀格(いたる)さん(62)に聞いた。  「巨大地震はいつ起こるかわからない。まずは、自分自身を助ける『自助』の心構えが大切」。堀さんはこう力説する。一般家庭には、タンスや家具などの転倒防止、防災キット、備蓄品の見直しなどを勧める。地震発生後の避難所生活では女性の生理用品やオムツなどが不足する場合もあるとし、こうした衛生用品も必要という。さらに、避難所では女性や子どもへの暴力も起こる可能性があり、「防犯ブザーなどを備えておくといい」と指摘する。  地震発生直後は電話回線がつながりにくくなる。「家族内で事前に、避難場所や連絡がつかなくなったときの待ち合わせ場所を確認する」のも有効だという。津波被害が予想される沿岸部では、「津波から逃げるには、距離よりも高さが重要だ。事前に高台や耐震性の高い高層階の建物などを調べておく必要がある」と強調。沿岸部に限らず、「自分は大丈夫だ、と思わず注意してほしい」と語った。 

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