北陸新幹線の福井県・敦賀駅より西の延伸工事が進まない状態が続いています。
与党整備委員会のほか福井県をはじめ沿線の知事は、すでに決まっている小浜・京都ルートでの着工を求める一方、石川県の政財界は滋賀県の米原を経由するルートに見直すべきだと声をあげています。
延伸の行方が事実上宙に浮いている状態のなか、双方が自らの主張を実現するためここのところ動きを活発にさせています。
工期と建設費は当初のおよそ2倍に それでも「東海道新幹線の代替ルート」と強調
7日に東京で開かれた北陸新幹線・与党整備委員会で、国土交通省は小浜・京都ルートの詳細案を提出しました。
当初15年と想定されていた工期は最長およそ28年に、敦賀-新大阪間の建設費は想定の2倍にあたる最大3兆9000億円となり、今後の物価上昇で最大5兆3000億円に膨らむ見通しであることも明らかになりました。
1時間を超える会合の後、与党整備委員会の委員長を務める西田昌司参院議員は、北陸新幹線の延伸整備は東海道新幹線の代替ルートとしての役割から重要な国策だと強調しました。
西田昌司参院議員(京都府選出)「東京-大阪間のリダンダンシー(代替補完機能)を上げるという、まさに国策なんですよ。だからこれはいくらまでだったらやるけれどもいくら以上だったらやらないとか、そういう判断をすべきものではない」
便益よりコストがかかるのでは? 事業の妥当性を問われると
ただ、事業の費用対効果を示すB/C(ビーバイシー)の面から考えると、旗色が悪くなってきます。
公共事業などで、B(ベネフィット=便益)をC(コスト=費用)で割ったときに、その数値が1を超えれば、その事業は妥当とされています。
小浜・京都ルートでのB/Cが1を切る可能性について問われると、西田氏は将来の便益の価値は現在よりも減るとする考え方を見直すべきと前置きをしたうえで、次のように述べました。
西田昌司参院議員「元々国交省がB/Cを作ったのは公共事業の優先順位、どの事業から先にするかという、より数字の高いものから順番にやっていこうというのでやったわけで、1より低かったらやらないというルールじゃなかった。今も当時も世界中で『1を切るからやらない』というB/Cの運用している国はどこにもない」
与党整備委員会の中でも「見解の相違」か 石川県選出の議員が…
ここで隣にいた佐々木紀衆院議員(石川2区選出)が何やら耳打ち。西田氏は「あんたが言って」とマイクを手渡します。
佐々木紀衆院議員「いま委員長がB/C=1を切ってでもやるのかということについて、ちょっと両方とれるような回答をされたんですけれども、基本やはり1を切った事業はできないと思うんですよね。ただB/Cのあり方自体を今後どうするかっていうのはこれからだということなので、決して何が何でも…っていうことではないという理解でお願いしたい」
「1を切ってもやる」「1を切ったらやらない」
認識のズレが垣間見えています。
西田氏は「それはちょっと違う」と言い、マイクを取り返します。
西田昌司参院議員「そういうことじゃなくて、基本的に1は切らないと思いますよ。思うんだけれども、事実として私が申し上げてるのは、1を切ったからやらないというB/Cの運用のしかたをしている国はどこにもないという事実を言ってるんです。これは事実ですから。そのことを踏まえて考えるべきだということです」
委員会では、年内に駅の位置や詳細なルートを決定し、2025年度中の着工を目指す方針ですが、一枚岩になっているといいがたい背景には、佐々木氏の地元、石川県での「かまびすしい動き」が影響しているのかもしれません。
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