過去最大規模で実施された日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」が7日で終了した。県内の離島が訓練の舞台となるなか、日米の軍事的な思惑の中で翻弄される与那国島を取材したー

軍事的な思惑に翻弄される与那国島

▽在沖米軍 四軍調整官 ロジャー・ターナー中将
「自己主張の強い領有権主張を通じて、中国はその影響力を拡大しようとしています」「中国の行動はこの地域の平和と繁栄を何十年にわたって保障してきたルールに基づく秩序に挑戦するものであります」

与那国駐屯地で開かれた日米幹部の会見。在沖米軍トップのロジャー・ターナ―中将は、発言した約9分間に、「中国」という言葉を何度も繰り返した。

▽在沖米軍 四軍調整官 ロジャー・ターナー中将
「日米同盟は世界で最も強力な同盟の1つであり、日本や他の地域の同盟国に対する侵略に迅速に対応する準備ができています」

在沖米軍トップ (四軍調整官)ロジャー・ターナー中将

▽陸上自衛隊西部方面隊総監 荒井正芳陸将
「九州本土から沖縄に至る陸海空あらゆる領域において(共同訓練を)実施する意味は、島しょ防衛作戦における日米同盟の実効性および信頼性を向上させる上で大変有意義であり、必要不可欠な訓練であります」

九州・沖縄を管轄する、陸自西部方面隊の荒井総監は、南西諸島での訓練の重要性を強調。国境に最も近い与那国島で日米の連携を強調することで、中国を牽制する狙いだ。

”国境の島”で日米の連携を強調

7月28日から8月7日まで、九州・沖縄の各地で実施された日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」は、「不屈の竜」を意味する。想定は「離島防衛」で、国内最大規模の共同訓練だ。

訓練には、今年3月にうるま市の陸上自衛隊勝連分屯地に発足した第7地対艦ミサイル連隊が初めて参加し、12式地対艦ミサイルの展開訓練などを実施。

与那国島には、今回初めて米海兵隊の最新レーダー「TPS-80」が持ち込まれ、負傷者の搬送訓練や米軍による気象観測訓練も行われた。

与那国島には米海兵隊の最新レーダーが展開

与那国駐屯地で、日米の連携と抑止力の重要性をアピールした荒井総監とロジャー・ターナー四軍調整官の2人はこの日、与那国町役場を訪れ糸数町長とも面談した。

▽記者 「町長とはどんな話を?」

▽在沖米軍 四軍調整官 ロジャー・ターナー中将
「ここに来れたことに感謝を伝えた よいサポートに感謝している」

糸数与那国町長と面談したターナー四軍調整官(左) 提供:米国防総省

関係者によると、1時間に及んだ面談の中で、今後も与那国島で訓練をしていく必要性などが話題に上がり糸数町長は、これに理解を示したという。


▽狩野史江さん
「(平和と)全く逆のことを島で起こされて大変迷惑をしております。今世界で軍備があるから安心、と思ってるところがあるでしょうか?戦争をしているところで、軍備あるところこそ狙われていますよね」

狩野史江さん



日米幹部の会見に合わせ、訓練に反対する住民有志が開いた会見では、与那国島で活発化する軍事的な動きを懸念し、中国との緊張は「軍事ではなく対話で平和的に解決してほしい」と訴える声が続いた。

▽小嶺博泉さん
「国境地帯、また沖縄・先島はその地理的な特性、地政学的なところからですね、(安全保障の)責任を負わなければならないみたいなことを言われたりしますけれども、私たちも日本国民ですよね」

対話による緊張緩和を訴えた与那国島の住民有志

与那国島における軍事的な思惑が表面化したのは、今から17年前の2007年にさかのぼる。

▽上空の取材ヘリからリポート(2007年)
「与那国町の上空です。米海軍の掃海艦がゆっくりと、民間港、祖納港に入港しました」

初めて与那国島に米海軍の掃海艦が入ったのは2007年



沖縄の日本復帰後初めて米海軍の掃海艦が与那国島に入港。沖縄戦での組織戦が終わったとされる日「慰霊の日」翌日の強行で、県と当時の町長、そして県民が反対した。

米海軍の掃海艦入港に抗議した人たち(2007年)


▽在沖米総領事館 ケビン・メア総領事(当時)
「八重山の方では、この地域も日本の防衛に重要な地域。日本の防衛に貢献している、“これからも貢献する用意がある”と示すことですから、(寄港は)良いことだと思います」

当時、アメリカ海軍は入港目的を友好親善のためとしていたが、のちに、有事を念頭にした港湾利用の調査が目的だったことが明らかになっている。

在沖米総領事館 ケビン・メア総領事(2007年当時)

その後、与那国島には自衛隊の駐屯地が開設され、2年前に初めて日米が共同で訓練を実施。そして現在では、与那国駐屯地に新たなミサイル部隊の増強が計画され、今年5月にはエマニュエル駐日米国大使が視察に訪れた。

7月には、日米の外務・防衛閣僚会議「2プラス2」で、南西地域での抑止力・対処力の向上が約束された。

日米「2+2」でも“南西地域の抑止力”向上に言及

▽猪股哲さん
「抑止力というのは、漠然とした国とか国体とかって言われるものは守れるのかもしれないですけども、住民の命を守るものではないということを重々深く理解していただきたいと思っています」

近隣諸国の動きを理由に軍事的な連携を加速させていく日米両国。住民の不安や懸念は置き去りにされたままだ。

猪股哲さん


<記者の視点>
人口約1700人の小さな島で軍事的な動きが活発化することは、住民1人ひとりの暮らしに少なからず影響がありますが、政府による丁寧な説明はないまま、南西地域における抑止力や防衛力の強化が進んでいます。(取材 平良優果)

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