2年前、SNS上でのいじめを苦にして中学3年の男子生徒が自ら命を絶った。亡くなってから2年間、一度も謝罪に来なかったという“加害生徒”側から、遺族のもとに1通の手紙が届いた。その内容とは。

「どつきまわすぞ」「なんで4なないの」SNS上に投稿されたコメント

 大阪府門真市に住む50代の女性。2年前、最愛の1人息子、Aさん(当時15歳)を失った。生きていれば18歳、高校3年生のはずだった。

 (Aさんの母親)「服にすごく興味を持っていたときだった。人が好きやし、何より友達と遊ぶことが優先で、友達をすごく大事にしていた子ですね」

 Aさんは地元の公立中学に通う3年生だった。特にバスケットボールが好きだったという。母親思いな一面も。10歳の時に母親に宛てて書いた手紙が残っている。

 【手紙より】『ぼくを産んでくれてありがと。ぼくはこれから自分の命も大せつにします』

 優しかったAさんが自ら死を選ぶまでに追い込まれたのは、同級生からの「いじめ」が原因だった。

 「どつきまわすぞ」「なんで4なないの?」…これは、SNS上でAさんのアカウントに投げかけられたコメントだ。匿名でコメントできるアプリで、「死ね」「非人権」などAさんを否定するような内容が書かれている。

 中には、1分間に10回以上「しんでください」と書き込まれたものも。Aさんも、嫌だねと返事を送っているが、亡くなる直前まで嫌がらせは続いたという。

「誹謗中傷というよりかは、計画的な殺人やと思ってます」

 亡くなった2か月後、市の第三者委員会が立ち上がった。真相を明らかにしたいと、ほかに証拠がないか調べ始めた両親は、Aさんの友人らの協力を得て加害生徒らのLINEのトーク履歴を手に入れた。Aさんが含まれていないグループの中で、加害生徒らは誹謗中傷を繰り返していた。

 【トーク履歴より】
 「こいつ一生ついてくるもん」
 「ゴールデンフィッシュ」
 「金魚の糞」

 さらに、Aさんが命を絶った後も反省の思いが感じられない投稿があった。

 【トーク履歴より】
 「まぁまじのことゆうとさ、何が悪いん?」
 「なぜ俺らだけピックアップする?ましてや直接ゆうてないだけマシやわ」

 (Aさんの母親)「誹謗中傷というよりかは、私はもう計画的な殺人やと思ってますからね。旅立つ決断をしたのは息子ですけど、背中を押したのは加害者やと思っています」

匿名のコメントや陰口も「いじめ」と認定する“異例”の判断

 今年3月、市は第三者委員会の報告書を公表した。第三者委員会は、Aさんが被害を訴えていたにもかかわらず「いじめ」として対応しなかったなど、学校側に「法的ないじめ対応の意識が根本的に欠けていた」と厳しく指摘した。

 さらに、SNS上で「死ね」などと匿名で投稿したコメントや、Aさんが含まれないLINEグループでの陰口について、匿名であっても、また、Aさんが詳しい内容を知らなくても「心身の苦痛を感じると認められるものについてはいじめに該当する」として、計62件をいじめとする極めて異例の判断を下し、いじめと自殺の因果関係を認めた。

 (門真市教育委員会 鈴木貴雄教育部長※当時 今年3月)「本人に知らせていなければ陰で何をやってもいいということではありません。今回示された認定についてはとても重いものと受け止めています」

 報告書の公表後、遺族は警察に傷害罪で刑事告訴を試みたが、受理されなかったという。

 (Aさんの母親)「刑事処罰を負わせることもできず、正直、もう無力感。母親として結局何もしてやれていない」

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