あたたかみのある火にゆらゆらと立ち上る煙…お盆を迎えるにあたって、欠かせないのが「線香」です。
島根県安来市にある老舗線香店も、今が出荷の最盛期。
一時は廃業寸前まで追い込まれながら、あるきっかけで奇跡の大復活を果たした線香店、79歳の店主の思いに迫ります。

もうすぐお盆、出荷の最盛期を迎える線香店で作業にあたっているのは…

「水も滴るいい女ですわ、ははは…」

大粒の汗をかきそう微笑むのは、内田貴子(うちだ・たかこ)さん、79歳。
100年前から続く老舗線香店「内田線香店」の4代目店主です。

この店の線香づくりは、全国でも珍しい昔ながらの手作業。
原料は杉の葉、香料などの化学薬品は使用しません。
「自然の物を届けたい」という、創業当時からのこだわりです。

内田線香店の「杉葉線香」は島根県のふるさと伝統工芸品にも指定されていますが、実は2021年、消滅の危機に直面していました。

内田線香店4代目店主 内田貴子さん 
「コロナの影響もありますし、やっぱり売り上げがどんどん落ちてましてね」

コロナ禍、外出自粛により寺への参拝客が減少し、線香の注文も激減。
大口の取引も中止になり、注文はひと月たったの2箱になったこともありました。

内田線香店4代目店主 内田貴子さん
「もうやめようと思ったんですよ、ほんとに。もう5月までが精いっぱいや…いうような感じでおったんですけどね」

そんな店の危機を救ったのは、店の状況を知った人によるあるSNSの投稿でした。

X(旧ツイッター)の投稿
「コロナで大口取引がなくなって廃業寸前だわって。お寺の関係者の方いらっしゃいませんかー」

この投稿が瞬く間に拡散されると、地元だけでなく全国から注文が殺到。
売り上げは数十倍に跳ね上がり、店も奇跡の復活を遂げました。

あれから3年…

内田線香店4代目店主 内田貴子さん
「(3年前と)ずっと同じ状態で続いております。私、それでもね、すぐ(売り上げが)下がるかなと思ったんです、一時の騒ぎで。そしたらそういう事もなく注文して頂いて。ありがたい事でございます」

伝統ある店は、今もその火を灯し続けています。

およそ100年前に遡る内田線香店の歴史。
初代・内田伝吉さんが創業したのが始まりでした。
当時は機械もなく杉粉をこねるのは水車。
原料の杉粉は近くの山で伐採された杉の枝から作っていました。

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