日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県敦賀市)を巡り、原子力規制委員会が2日、再稼働に向けた申請を「新規制基準に不適合」とする審査書の作成に入った。東海第2原発(茨城県)も再稼働のめどが立たない中、原発専業である原電の経営には大打撃だ。ただ、原発の新増設に前向きな岸田政権を後ろ盾に、計画中の敦賀3、4号機の建設が前進する恐れはある。(荒井六貴、山下葉月)

◆原電の行く末厳しく

日本原子力発電敦賀原発3、4号機の建設予定地(手前)。奥は敦賀原発1、2号機=福井県敦賀市で、本社ヘリ「まなづる」から

 「大変残念だ。経営の両輪である敦賀2号機と東海第2の再稼働を目指す。引き続きその位置付けは変わっていない」。規制委の判断を受け、報道陣の取材に応じた原電の村松衛社長は、落胆した様子で話した。  原電は1957年、米英から原発の技術を導入し国内で開発していこうと官民の協力で設立。株主は2020年3月現在で、東京電力を筆頭に関西、中部などの10電力会社や、日立製作所や三菱重工業の原発メーカーからなる。  再稼働が困難となった敦賀2号機がどうなるのか、株主の電力会社も今後の行方に気をもむ。東電は「注視していく」とコメント。関電や中部電は「技術的なサポートをしていきたい」「引き続き支援していく」と原電の側に立つ。

◆発電なしでも売上高967億円

敦賀原発2号機の審査を巡る経緯

 原電の収入源は、敦賀と東海第2による売電が柱だが、東電福島第1原発事故が起きて以降、ほとんど発電していない。それなのに23年度、967億円の売上高があった。その9割超は売電先の東電子会社などが原電に毎年支払い続ける料金による。19年度は東電エナジーパートナーが約369億円、関電が約189億円、中部電が約172億円、北陸電が138億円だ。  電力会社が支払う料金の原資は電気料金にほかならない。「対価なき支払い」には各電力会社の株主からも批判の声は出ている。しかし、中部電は「自社の発電所と同じ扱いで、維持保全の必要最低限の負担をしている」、関電は「安全に維持管理するための必要最低限の費用を支払うことにしている」と強弁する。

◆敦賀3、4号機の稼働は視野に

 敦賀2号機が再稼働できないとなると、最後の砦(とりで)は東海第2原発だ。しかし、早期の再稼働は不可能と言っていい。規制委による新規制基準の審査はパスしたものの、今年に入り建設した防潮堤の不備が見つかり、規制委からは造り直しさえ求められている。  さらに、水戸地裁が21年3月、避難計画の問題点を指摘し、運転の差し止めを命じ、現在、東京高裁で裁判が続く。再稼働の際には30キロ圏内の6自治体の同意が必要となり、他の原発よりもハードルが高い。  状況は厳しいが、新増設に前向きな岸田政権の原発政策が追い風となり、敦賀3、4号機の稼働は視野に入っている。地元の敦賀市議会は6月、「新増設の計画を具体化すること」との意見書を国に提出した。敦賀原発の設備補修に携わってきた元原電社員で、敦賀市の北条正市議(72)は「敦賀は原発に理解がある。手っ取り早いのが3、4号機の建設だ」と、稼働に自信を見せた。 

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