西川公也氏(2017年撮影)
鶏卵生産大手「アキタフーズ」から現金を受け取ったとして、2022年に吉川貴盛元農林水産相の収賄罪が確定した鶏卵汚職事件で、吉川氏の約5年前に農相を務めた、栃木2区選出で元自民党衆院議員の西川公也氏(81)が、東京地検特捜部の聴取に、同社から14~20年の6年間に計1500万円を受け取ったと供述していた。 本紙の請求で東京地検が開示した刑事確定訴訟記録のうち、2021年1月13日の西川氏の供述調書の抜粋は次の通り。(文中の■■は黒塗りで開示された部分。個人名や金額などが含まれるとみられる) 【西川公也氏の供述調書(抜粋) 2021年1月13日】※■■は黒塗りの非開示部分 秋田社長から現金を頂いたことについて述べますと、私は私が農林水産大臣に就任したころから、令和2年7月までの間、秋田社長から、毎年のお盆や暮れの時期だったと思いますが、その都度、100万円程度の現金を手渡され、これを受け取っておりました。 それ以外にも、私は、農林水産大臣の就任の際や総選挙前には、秋田善祺(よしき)さんから100万円より多い金額だったと思いますが、それぞれ現金を受け取っていました。 私が内閣官房参与当時で言えば、私が記憶している範囲で言いますと、私は、内閣官房参与当時、秋田善祺さんから、3回その都度100万円、つまり、合計300万円を受け取りました。 内閣官房参与当時の話として記憶している範囲がそれだけであって、内閣官房参与当時も、盆暮れの時期に、それ以外にも100万円を頂いたことがあったはずですから、私は、内閣官房参与当時でいえば、秋田善祺さんから、合計500万円程度の現金を受け取っていたと思います。 無論、私はこういった現金が賄賂に当たる可能性があるなどと思い、秋田社長に対して、よく「困ります」などといって、受け取りを断ろうとしたこともありました。 しかし、秋田社長は私が断ろうとしても参与室等にその現金の入った封筒を置いていくなどするので、結局、私もその現金を受け取っていました。 私が最後に秋田社長から現金を受け取ったのは、令和2年7月3日のことで、東京地方検察庁がアキタフーズに対し、捜索差し押さえを行った前日のことでした。 私はこの際、広島県で秋田社長からクルーザーを見せてもらうなどし、食事を終えた後に、ホテルで、秋田社長から私の分として100万円をいただいたほか、■■参議院議員のパーティー券購入代金として、■■議員に渡すための100万円も預かりました。 しかし、翌4日に先に述べた捜索差し押さえがあり、私は、仮に私がそのまま、■■議員に対して、秋田社長から預かった100万円を手渡すと、■■議員まで巻き込んでしまうなどと思いました。 私はそういったことは避けたいと考え、その後、私が東京都内で宿泊する際に利用していた■■のマンションの部屋に■■議員に渡す予定であった100万円をずっと保管しておりました。 そして、先日、私は、検察官に対して、その現金100万円を任意で提出しており、今後、私が秋田社長と接触しても問題がないような時期に、この100万円を秋田社長に返却するつもりです。 ちなみに、私は、この7月3日のとき以前にも私が秋田社長から頂く現金100万円のほかに、■■議員のパーティー券購入代金として現金を預かったことがあり、その際には、約束どおり、■■議員にもその現金を手渡しました。その額も100万円だったと記憶しています。 私は、先に述べたような、秋田社長からいただいた現金を、有権者の冠婚葬祭の際の祝儀、香典代、弔電代等、また、私設秘書や運転手などの人件費、会食の費用、外遊の際に外国の要人に手渡すお土産代などに使っていました。 私設秘書や運転手の人件費については、■■の収支報告書にも記載していました、それは、私が支払った人件費の一部にすぎませんでした。 というのも、仮に私が支払った人件費をそのまま、収支報告書に記載した場合、運転手や私設秘書の収入額がそれなりに多額であることが判明し、運転手や私設秘書に納税義務が発生してしまったり、彼らの年金額が減額されてしまったりする事態が生じる可能性がありました。 私は、こうした事態が生じないようにするために、私設秘書や運転手の人件費の一部しか収支報告書に載せないようにしていました。 このほか、私は、平成30年1月からアキタフーズの顧問に就任し、報酬として、アキタフーズから毎月■■円を得ておりました。 ところで、秋田社長は、先に述べた通り、アキタフーズの経営者であるばかりではなく、養鶏業界を率いる立場にありました。 そして、秋田社長は、自ら主導して、別の機会に既にお話しした「自由民主党養鶏議員連盟」を設立しただけでなく、私や、当時の吉川貴盛衆議院議員、河井克行衆議院議員、■■参議院議員、■■衆議院議員、■■衆議院議員を集めて、「養鶏研究会」と名付けた勉強会や会食を重ねていました。 無論、この「自由民主党養鶏議員連盟」も「養鶏研究会」も秋田社長や養鶏業者の要望を私たち政治家を通じて国政に反映し、実現するために、秋田社長が率先して設けたものでした。 また、秋田社長は、会食の席や日鶏協や国際協の定時総会などに、私や当時の吉川貴盛衆議院議員などだけではなく、当時の農林水産省畜産振興課のh課長などの、農林水産省幹部を来賓として呼ぶなどしていました。 このようにして、秋田社長は、私たち政治家や農林水産省の官僚との間で懇親を深めつつ、養鶏業界の抱えるさまざまな問題を共有して、その問題の解決を要望するなどしていたのでした。そして、秋田社長自身、先に述べた定時総会などで養鶏業界のためになる政策や要望の実現のため、政治家や農林水産省の官僚に働きかけることの重要性や秋田社長自身が政治家等へ働きかけて、養鶏業界のための政策や要望を実現したこれまでの実績などを公言することにはばからない方でした。 (略) そして、私も、これまでの秋田社長との面談や会食の際などに、秋田社長から秋田社長自身が民主党政権当時に、政治家に働きかけて、鶏卵生産者に対する補助事業の改革等を行ってもらったことなどを自慢話として聞かされたことが何度かありました。 また、秋田社長ら養鶏業の団体は、そもそも平成21年から平成24年までの間の民主党政権当時やその数年前ころから、支持率を高めていた民主党を支持していました。 ところが、秋田社長は、平成24年末に自由民主党政権が発足する見込みとなるや、一転して、自由民主党を支持するようになりました。 これらのことからおわかりのとおり、正直申し上げると、秋田社長は、民主党や自由民主党、さらにそれらの政党に所属する政治家などの政治理念に共感して支持などするというのではなく、アキタフーズを含む養鶏業界に有利な政策や要望を実現する実利のため、その時々の政権与党やそれに所属する政治家を支持するなどしていたのでした。 無論、私は、秋田社長のこういった考え方を批判しているのではありませんし、批判するつもりもありません。 私としてもアキタフーズを経営し、養鶏業界を率いる立場にあった秋田社長が、政治理念ではなく、アキタフーズを含む養鶏業界に有利な政策やその要望を実現する目的で、与党に所属する政治家を支持などすることは、当然、必要なことだと思っていましたし、今も、そのように思っています。 そして、私も、常日頃、多くの若い方に農業や畜産業に従事してもらうことにより、農畜産業に従事する人口を維持・増加するためには農家や畜産業者などの生産者がもうかる必要があり、国家として、生産者がもうかる仕組みを作る必要があると考えておりました。 実際にその考えの一貫として、私は中華人民共和国に複数回行って、そこで要人と折衝するなどして、米や牛肉に関して、日本から中華人民共和国への輸出を促進するための政治活動を行うなどしてきました。 このように、私自身も、農畜産業の生産者の「もうけ」、つまり、実利を重視する考え方をしており、正直申し上げれば、それが農畜産業者からの私に対する票につながるなどと考えていました。 ですから、私も秋田社長とつきあい始めた平成25年当時からアキタフーズを含む養鶏業者の要望を実現するために、与党に所属する政治家を支持などするという秋田社長のこういった考え方を理解しており、それが間違っているとは全く思っていませんでした。 以上からお分かりのとおり、秋田社長が私たち政治家などと懇談を深めるなどとするのは、私たち政治家に、アキタフーズを含む養鶏業者に有利な政策や要望を実現してもらおうと考えていたからにほかなりませんでした。 そして、私も、秋田社長が私に対し現金を手渡すのは、私にアキタフーズを含む養鶏業界のためになる、有利になることをしてもらいたい。養鶏業界の要望を実現してもらいたいという気持ちからであったことは、現金を受け取る際に分かっておりました。 そして、秋田社長は、私が秋田社長から現金を頂くときや、その前後ごろの私と秋田社長との面談の際などに、私に対し、秋田社長があらかじめ用意した、個別の要望事項が記載された要望書を手渡して、あるいは口頭のみで、多種多様な要望を受けました。 (略) 今回、私は秋田社長から頂いた現金が賄賂に当たる可能性があると思い、収支報告書に記載などしておりませんでした。 検察官からは、これまでにずっと「収賄罪や政治資金規正法違反などにより逮捕、起訴される可能性がある」という説明を受けており、そういったことがないなどとは一度も言われたことはありません。 それでも、私は、今回の件で、昨年年末、「潔く全て話して、政治の政界から身を引こう」と考えるに至り、それ以来、検察官に思い出すことができる範囲で全てお話ししたつもりであり、本日の調書の内容も昨年年末からお話ししているものです。 私自身、今回の件は、深く反省しておりますし、今後も捜査に協力して参りたいと考えております。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。