広島市はことし、式典の入場規制を原爆ドーム周辺を含む平和公園全体に拡大します。去年までの規制エリアとの違いや、規制エリア拡大の背景について取材しました。

広島市はことし5月、平和記念式典に伴う入場規制のエリアをこれまでの原爆慰霊碑など平和公園南側一帯から、原爆ドーム周辺を含む平和公園の全体に拡大すると発表しました。入場規制中、平和公園内に入るには手荷物検査を受ける必要があり、プラカードや拡声器などは持ち込みが禁止されます。

原爆ドーム周辺では去年の8月6日、「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」が主催したデモに参加した5人が、式典の対応にあたっていた広島市の職員に集団で体当たりするなどの暴行を加えたとしてことし逮捕・起訴されています。この問題を受けて、広島市は警備体制などを見直し、入場規制エリアの拡大に至ったといいます。

■規制エリアを拡大する市 平和記念式典の担当者は…
広島市市民局 市民活動推進課 片桐清志課長「平和記念式典に関連して、幸いにも大きなケガにはならなかったですけれども、そういう暴力的な行為が行われることは市としては看過できないものだと思っておりますし、二度と起こさないように主催者として努力しなければならないものだと思っております。色んなご意見の方がおられ、賛否ありまして、表現の自由が阻害されるじゃないかっていう方もおられるし、逆に、安全対策としてこういうものをしっかりやってほしいという意見も沢山いただいているところでございます」

■規制エリアの拡大に賛成する市民団体の代表は…
静かな8月6日を願う広島市民の会 石川勝也代表「広島市の判断は全く正しいものであると理解します。事件が起きた以上は、厳格な対応をするという広島市の対応が、当然のことをなさっていると」

■一方、去年、原爆ドーム前で集会を開いた団体は…
8・6ヒロシマ大行動実行委員会 宮原亮事務局長「今回の入場規制は、8月6日の原爆の日に、戦争反対の声をね、原爆ドームの前で上げるということを公権力の力でね、禁止していくということなので、これ自身が戦争の始まりそのものっていう問題だと思いますので、私たちはこれを絶対認められないし、この規制に対して一歩でも引くということはない」ことしも、原爆の日は入場規制中の午前7時から原爆ドームの前で集会を行う予定だといいます。

■原爆ドームを訪れた人々の声は…
●東京から訪れた女性「原爆ドームというのは私たち日本人だけじゃなくて、世界的に知られているシンボル。原爆ドームとみんなの意見とがマッチしてより強いメッセージ性が世界に対して発せられるので、ここでできなくなってしまうのはインパクトが弱まってしまうから、残念かなと思いますね」
●茨城から訪れた高校生「自分の意見を伝えることは全然ありだとは思うんですけど、式典の最中にやるのはちょっとちがうのかなって自分は思いますね」

8月6日の午前5時から午前9時まで行われる平和記念式典の入場規制。去年とことしの違いを地図を使って説明します。
※地図が表示されない方は【画像を見る】のリンクよりご覧ください。

去年は、緑色で示した平和公園の南側のエリアで入場規制が行われていました。

ことしは新たに黄色で示した、原爆ドーム前を含む平和公園の北側エリアでも平和記念式典のため入場規制が行われることになります。

入場規制のエリアにいる公園の利用者は、6日の午前5時に一度外に出るよう要請されます。午前5時から午前6時半のあいだは、公園内で不審物の確認などを行うため基本的に立ち入りができませんが、慰霊碑への参拝に限っては専用のルートが設けられるということです

午前6時半からは6カ所のゲートから平和公園内に入場ができるようになりますが、手荷物検査が必要となります。この手荷物検査は▼危険物▼拡声器やマイクなど大きな音を発するもの▼プラカード▼ビラ▼横断幕などの持ち込みが禁止され、持っている場合には平和公園には入れなくなります。なお、手荷物検査を終え平和公園内に入っても、式典参列者席があるメイン会場への入場には金属探知検査を受ける必要があります。

また、入場規制中は▼ゼッケン▼タスキ▼ヘルメット▼はちまきといったものを着用することが禁止されるほか、▼公園内に大人数で滞留して他の利用者の通行を妨げた場合▼警備のための移動要請に従わない場合▼規制線や検査場を強行突破した場合などは、平和公園外への退去を命じられることがあるということです。

この規制内容を市が5月に発表してから、入場規制のエリア拡大に賛否両論となっています。規制に反対する人々は入場規制エリアのなかで集会を行おうとしていて、当日は会場周辺の一部で混乱が予想されています。

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