女性ちんどん屋グループ「べんてんや」が、米国を横断する旧国道「ルート66」を旅したロードムービーの制作を進めている。20世紀の米国の繁栄を支え、2026年に100周年を迎えるルート66を舞台に、メンバーが現地の米国人や世界中の旅行者と交流。映画制作を機に米国でのイベント出演を増やし、「アメリカにも笑顔を届けたい」と意気込む。(米イリノイ州シカゴで、浅井俊典)

米西部カリフォルニア州のルート66で撮影に臨むべんてんやのメンバ-=べんてんやのインスタグラムから

ルート66 米国を横断する長距離国道として1926年に創設された。イリノイ、ミズーリ、カンザス、オクラホマ、テキサス、ニューメキシコ、アリゾナ、カリフォルニアの8州を結ぶ全長約3800キロで、交通の大動脈として沿線の町はガソリンスタンドやモーテル、飲食店で栄えた。高速道路の整備で85年に廃線となったが、古き良き米国を象徴して歌やドラマで取り上げられ、今も多くの旅行者が訪れる。

◆「歩くジュークボックス」各地で共演

 「次は映画撮影の思い出の曲『カントリーロード』と『ルート66』、2曲続けてお届けします」。シカゴ中心部のミレニアムパークで6月中旬、カラフルな着物姿のメンバー4人が「ジャパンフェスティバル」にスペシャルゲストとして出演し、にぎやかな歌と楽器の演奏を繰り広げた。  旗揚げから16年。国内では名古屋を拠点に活動する。海外では、イタリアや英国、フランスなどで公演を実施し、ちんどん屋の文化を海外にも紹介してきた。米国との関わりは19年にニューヨークやカリフォルニアなど7州を巡ったツアーから。ルート66を旅する映画の企画は、ニューヨーク在住の日本人クリエーターらから出演依頼を受けて23年2月に始まった。  プロデューサーの河野洋さん(57)は「自前の楽器を手に数多くの持ち歌を演奏するべんてんやは、いわば日本の『歩くジュークボックス』。そんな彼女たちなら、ルート66の道中で多くの人に元気をもたらす姿を記録できると思った」と話す。

◆「ノスタルジックさ」が共通点

米イリノイ州シカゴのジャパンフェスティバルで、会場を練り歩くべんてんやのメンバーたち=浅井俊典撮影

 撮影は昨年9月に17日間かけ、メンバー4人がシカゴからカリフォルニア州サンタモニカまで約3800キロを車で横断した。シカゴでは日系米国人の高齢者を慰問し、西部ニューメキシコ州サンタフェではメキシコ音楽「マリアッチ」の音楽隊と共演。撮影に加わったメンバーのマーサさんは「旅の途中で出会った夫婦に『ルート66は米国のすべてを見ることができる』と言われたが、その通りだった。移りゆく風景、人との出会い、歴史のすべてに米国を感じた」と語る。  日米の大衆文化に詳しいノーザン・ケンタッキー大学の桑原泰枝教授(ポピュラーカルチャー論)は、べんてんやとルート66という異色のコラボレーションについて「日米のノスタルジックな部分をそれぞれ代表するちんどん屋とルート66が接点を持つことに面白さがある」と指摘する。  映画は25年の上映を目指して編集が続けられている。べんてんやは26年までは毎年渡米し、各地のイベントでルート66の100周年を盛り上げていく予定という。リーダーのスージーさんは「べんてんやの名前の由来は福の神の弁財天からとったもの。米国の人たちにも福をもたらすことができたら」と話している。 

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