いわゆる「菊池事件」の再審請求を巡り、熊本地検が裁判のやり直しに反対する意見書を熊本地裁に提出しました。

菊池事件を巡り、遺族が求めている再審(裁判のやり直し)請求について、遺族側弁護人と検察側、そして裁判所による三者協議が7月30日、熊本地裁で行われました。

「菊池事件」とは

菊池事件は1952年、ハンセン病患者とされた男性が当時の熊本県水源村(現在の菊池市)の役場職員を殺害したとして、隔離先の特別法廷で死刑判決を受けた事件です。男性は無実を主張しながらも10年後に死刑が執行されました。

男性は、通常とは異なる「特別法廷」で死刑判決を受けました。「特別法廷」はハンセン病患者などの隔離先の菊池恵楓園(熊本県合志市)などに最高裁判所が設置した法廷で、審理も事実上非公開で行われました。

遺族が再審請求へ

この裁判について、熊本地裁は2020年の判決で「特別法廷は憲法違反」と認め、判決が確定。男性の遺族は2021年4月、熊本地裁に再審を請求していました。

一方、刑事訴訟法では再審請求ができる場合について「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」と定めていますが、憲法との関連については明確な規定がありません。そのため、遺族側と検察側の主張が対立しています。

遺族側の主張

これまで遺族側は「死刑を執行された男性は犯人ではない」として新たな証拠を裁判所に提出。さらに再審のあり方についても「憲法に違反した形で開いた裁判であるので、再審を開く理由になる」などとする専門家の意見書も提出しています。

こうしたことから遺族側は、裁判手続きの違憲性を理由とする「憲法的再審事由」にあたるとして再審開始を訴えています。

検察側の主張

一方、遺族側弁護人によると、検察側はこれまで、死刑を執行された男性が犯人であると主張。そのうえで、この日の三者協議で検察側は「犯人である事実が変わらない以上、刑訴法の再審事由に当たらず、裁判自体の違憲性についても刑訴法に規定されていない」と反論し、「憲法的再審事由」は認められないと主張しました。

こうした検察側の主張に対し、遺族側の弁護人は、今年10月に熊本地裁で開く法学者の証人尋問を通じて「憲法的再審事由」の根拠を示すとしています。

今後の審理の流れ

この審理の中で熊本地裁は今年6月、遺族側が求めていた法学者の証人尋問の日程について今年10月1日の実施を決めています。

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