大雨の夜、2人の警察官が命を落とした。
その時、現場では何が起こっていたのか。取材を続けると、当時の状況がわかってきた。
記録的な大雨となった山形県新庄市で、救助に向かっていたパトカーが流され警察官2人が死亡した。
殉職したのは、新庄警察署の玉谷凌太警部補(巡査長から2階級昇任)26歳。
そして29日、警察は28日に現場付近で発見され、身元が分からなかった死亡した男性について、新庄警察署の佐藤颯哉警部(巡査部長から2階級昇任)29歳だと発表した。
玉谷凌太警部補は新庄警察署の真室川駐在所に勤務、佐藤警部は新庄警察署の交通課で勤務する警察官だった。
■大雨に対応
25日、山形県内は記録的な大雨に襲われ、いたるところで道路が冠水、住宅などが浸水するなどの被害が出始めていた。
佐藤警部と玉谷警部補は、2人でパトカーに乗り、新庄警察署の管内を流動警戒、つまりパトロールしていた。
そんな中、25日午後11時23分、1本の110番通報が入る。
一般の人からの救助要請だった。
警察署から連絡を受け、現場に向かったのが、佐藤警部と玉谷警部補の乗るパトカーだった。
現場は、浸水が想定されていた。
警察の規定にはなかったが、ライフジャケットが必要だと考え、署はライフジャケットを積んだ車両、ワンボックスタイプの事故処理車を後続車両として現場に向かわせた。
■届かなかった”ライフジャケット”
一刻も早く現場に向かおうと走る、佐藤警部と玉谷警部補の乗るパトカー。
そして、ライフジャケットを届けるべく、後続する車両。
その間に、自然が立ちふさがった。
土砂崩れが発生し、後続車両が巻き込まれたのだ。
車両は動けなくなり、乗っていた警察官は自力で脱出。その後、新庄警察署に戻った。
ライフジャケットは、届かなかった。
佐藤警部と玉谷警部補のパトカーが水没することになる現場付近まで1キロもなかったとみられる。
■「業務は最後までやり抜く人」「非常にまじめ、リーダー的存在」
県警は、佐藤警部の人となりについて、「責任感が強く、正義感も強い。業務は最後までやり抜く人」と話した。
上司からも信頼が厚く、仕事ぶりは県下でもトップクラスだったという。
玉谷警部補については、「非常にまじめ」「職場の同僚の中ではリーダー的存在」と話した。
警察がたびたび使うことばに「県民の安心と安全を守る」というものがある。
2人にはそれが染みついていたのかもしれない。
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