救急車(資料写真)

 救急車の適正な利用を促すため、茨城県は、緊急性がないのに救急車を利用した患者から、病院が7700円以上の「選定療養費」を徴収できる仕組みづくりに取り組む。医師会などと緊急性の判断基準などについて協議し、12月1日からの運用を目指す。全国的に増加傾向にある救急車の出動件数を抑える狙いで、都道府県単位では全国初の取り組みという。

◆2023年は14万件出動、うち6万件超は軽症

 市町村では、三重県松阪市の病院が6月、緊急搬送されても入院の必要がなかった一部患者から7700円を徴収するようにした。選定療養費は、一部の大規模病院への患者集中を防ぐ目的で、2016年に国が定めた。一般病床数200床以上の病院を紹介状なしで受診する場合は患者が費用を負担する制度だが、ほとんどの病院では、救急搬送は徴収対象外とされてきた。  県によると、県内の救急車の出動件数は2017年の11万8567件から、2023年は14万3046件(速報値)に増えた。2023年は約半数の6万8549件が、入院を必要としない軽症者だった。

◆「本当に必要な人に救急医療が提供できるよう」

 県は、現時点で選定療養費の徴収に前向きな県内23病院や県医師会と協議し、緊急性を判断する基準づくりを進める。緊急性が認められない例としては「包丁で指先を切り、血がにじんだ」「発熱、咽頭痛、頭痛の症状」などが上がっている。結果的に軽症なら全て徴収対象とはせず、個別に具体的な状況で判断する方針だ。  大井川和彦知事は26日の記者会見で「救急車が無料のタクシー代わりになってしまっている現状は憂慮すべきだ。本当に必要な人に救急医療が提供できるよう協力をお願いしたい」と述べた。(長崎高大) 

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