街中を歩いていると渡っても大丈夫なのかな、と躊躇してしまう「老朽化した歩道橋」を見かけることがあります。老朽化した歩道橋の安全性は保たれているのか、そして、なぜ本格的な補修などが行われないのでしょうか。
劣化が気になる歩道橋が…
仙台市宮城野区原町1丁目にある「宮中前歩道橋」。この歩道橋は1967年、国道45号線上に設置されました。
近くには、中学校や高校などもあります。また、交通量も多く、仙台市中心部に向かう車など日中は多くの車が行き交う歩道橋ですが…。
千葉陽太記者:
「建設から50年が経過したというこちらの歩道橋、老朽化が非常に進んでいます。階段の一部が崩れているところもあり、歩きづらい状態です」
設置から57年が経った歩道橋では、アスファルトの舗装がはがれて、金具が露出している箇所もあります。
また、階段や通路の下にははがれた塗料の落下防止のため、ネットで覆う応急処置が施されているなど、あちこちで劣化が目立つ格好です。
歩道橋を利用する人たちは…
全体的にサビが目立っていたり、足場が崩れていたりと、劣化が気になるこうした老朽化した歩道橋について、近隣住民や利用者はどのように感じているか話を聞きました。
通行人:
「けっこう古くなってますよね。見た目ちょっと危ないなと思うので、渡らない人もいるかも」
よく車で歩道橋下を通る人:
「近くに信号があるというのもあるけど、仮に歩道橋が近くにあってもなんかあったら怖いな。(車で歩道橋下を)走っていて、老朽化で何か落下してきたら怖い」通勤で利用する人:
「中学生たちは(通学で)全然使っていない。雪とか雨の日は使わない。自身の安全のため」
老朽化が進んだ歩道橋について、近隣住民や利用者からは不安視する声が聞かれました。中には、実際に危ない目に遭った人も…。
通勤で利用する人:
「冬場に雪が降ると、階段が埋まって滑り台のようになる。けっこう会社の人も毎年ここで転ぶ人がいるので。私も転んだことありますし、会社の人もしょっちゅう転ぶので」
悪天候の日は、特にこの歩道橋の路面状況が気になるという人が少なくないようです。
目の前に歩道橋がある宮城野中学校によりますと、通学してくる生徒の多くは老朽化を理由に、歩道橋ではなく手前にある横断歩道を渡っているそうです。
歩道橋が設置された理由は
では、そもそもこの歩道橋はどのような経緯で設置されたのでしょうか。
この宮中前歩道橋を管理する仙台河川国道事務所によりますと、設置が50年以上前ということもあり、当時の詳細な記録は残っていないものの、交通量の多い道路で通学する中高生も多いことから、設置を求める地域の要望に応えたのではないかということです。国道45号線を横断する中高生や地域住民を交通事故から守るという地域のニーズが、設置のきっかけになったとみられます。
宮城県内の国道にかかる歩道橋の設置数の推移を表したグラフです。
1960年代後半から設置が進んでいることが分かります。なぜこの時期に歩道橋が増えたのでしょうか。
設置の背景に「交通戦争」
その背景には、交通事故の発生件数の推移にあります。こちらは1960年から2000年にかけて全国で発生した事故のグラフです。1960年代後半以降、大きく増加し、これに合わせて歩道橋が設置されたのです。
国内では、自動車交通の急成長に伴って交通事故が急増。事故による死者数も急増し、1970年に死者数は国内最悪の1万6765人に達しました。1960年代の状況は、「交通戦争」とも呼ばれていました。
県内でも、交通量の増加に伴い歩行者を事故から保護するほか、円滑な道路交通確保のため、1960年代後半から歩道橋が設置されるようになりました。渡り初め式には、多くの人が集まっていて、当時、歩道橋には大きな期待がかかってきていたことが伺えます。
ところが、当時設置された歩道橋が現在、老朽化していることになります。
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