ほとんどの小中学生は今、夏休み。学期末に渡される通知表は、沖縄では「よい子のあゆみ」といった名称で馴染みがあります。今年、これを廃止した学校が、沖縄県のうるま市にあります。
成績通知の代わりに…
うるま市の赤道(あかみち)小学校。
1学期の終業式を前に行われた学活の授業で、「よい子のあゆみ」に代わり、児童が自ら学習する力を伸ばすねらいだという“あるもの”が手渡されました。
▽5年1組の担任
「漢字テストと、国語と算数の“個票”を返していきたいと思います」
“個票”とはー
うるま市の赤道小学校で、今年度から導入された“個票”。テスト結果を元に、各項目ごとの達成度を可視化したものです。
児童は…
「テストの平均とか、自分のテストの平均がグラフで見れたので分かりやすかった」「テストの点数が分かりやすかった」
“個票”は、児童たちに手渡して終わり、ではありません。
▽授業で説明する先生
「きょうはこの個票をもとに、夏休みの自学自習計画を立てていきます」
「自分が頑張ったところを見て、頑張った方がいいかな、もう少しここを頑張ろうかなと思うところ、黄色い蛍光ペンで線をひいてもらってもいいですか」
児童たちは自らテスト結果を振り返って、これから更に勉強したい単元と自分が頑張った単元に印をつけ、学習目標を設定します。
▽授業で先生の説明
「最初に、夏休みの目標を立ててほしいです」
時には悩みながら、教科書を振り返る児童も。クラスメイトの立てた計画をみて、自分のものに生かします。
児童たちが立てた目標はー
▽児童の発表
「2学期の漢字を先取りして練習したり、算数の小数の割り算・割合を復習する」「漢字を繰り返し書いて、覚えてから自分でテストをする。もし間違えた漢字があったら、また練習する」
児童たちは自ら立てた目標と計画をもとに、長い夏休みを過ごします。県内初の取り組みとなるよい子のあゆみの廃止と個票の導入。この改革に至った背景を校長先生に聞きました。
▽赤道小・城間修司校長
「子どもたち1人ひとりの、“主体的に自らの学びを振り返る自己評価の力”を伸ばしたいと考えています。自己評価の力を伸ばすためにも個票の方がよりベターな方法だと考え個票を導入しました」
城間校長がこの取り組みを思い立ったのは2年前のこと。反対の声は無かったのでしょうか。
▽赤道小・城間修司校長
「思いを伝えたところ、保護者や地域の皆さんから理解を得られたと考えています」
とはいえ、教員たちには当初戸惑いもあったといいます。
当初は教員もびっくり「通知表なくしていいの?」
▽教員7年目 山城志翔教諭
「最初はびっくりでした、「よいこのあゆみ」、なくなっていいの?という感じで、驚きと衝撃が一番でした」
▽教員19年目 饒平名沙織教諭
「正直にいうと、どうなるのかな、とちょっと不安でした」
しかし、現在の思いはー
▽教員7年目 山城志翔教諭
「子ども自身が、自分のできている所とできていないところを見つけて、できていないところに対してどう自分で目標を持って学習に取り組めるか、という部分ではかなり有効な手立てだと思います」
目標を立て、自己評価する力を養う個票。教員の働き方にも変化をもたらしています。
▽教員7年目 山城志翔教諭
「よい子のあゆみの作成はかなりの時間を要していました」「(自身の子どもを)寝かしつけしたあとにまた再度、夜に出勤していました」
教員の過重労働の要因のひとつと指摘されてきた、通知表の作成。これが廃止されて個票に代わったことで、むしろ子どもたちと向き合う時間が増えたといいます。
▽教員7年目 山城志翔教諭
「子どもたちの苦手を克服したり軽減できるような活動に時間を多くあてられて、子どもたちといっぱい話ができて、信頼関係が築けて、というところにだいぶ時間を割くことができています」
児童の学習能力を伸ばすために導入された個票が、教員の業務負担の軽減にも繋がり、教育現場の変革がはじまっています。(神里晏朱)
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