最低賃金について議論している国の審議会が、今年度の全国平均の時給を過去最大の50円引き上げる目安を示しました。全国平均の時給は1054円となります。富山県の最低賃金も千円の大台に近づく見込みで、街の人からは「千円を超えてほしい」といった声が聞かれました。

「最低賃金」は企業が労働者に最低限支払わなければいけない賃金で都道府県ごとに金額が定められています。

現在、全国平均は時給1004円。

富山県は北陸三県で最も高い948円ですが東京都の1113円と比べると大きな開きがあります。

最低賃金について議論する厚生労働省の審議会は24日、物価高が続いていることなどを踏まえて今年度、全国平均の時給を過去最大の50円引き上げる目安を示しました。

目安通りの引き上げが実現すれば全国平均の時給は1054円、富山県は千円の大台に迫る998円となります。

街ゆく人の反応は─。

40代「うれしいです。私もどれだけあがるのかなって楽しみです。物価も上がってスーパーに行っても前に比べたら、お金がいるので」

大学1年生「やっぱり1000円は超えると”おっ!”って感じになると思う。1000円とか超えてくれたらうれしい」

大学1年生(塾講師のバイト)「(時給は)1200円から1300円くらいです。今すぐ給料を上げてほしいとかそういうものでもないので、でもお給料は上がってほしいです。スーパーのものとかも比較的、前よりは高くなっているので」

20代「1000円超えてほしいです。1000円は欲しいです。1050円以上欲しい」

記者「最近はお金がかかる気がしますか?」

20代「する。買い物してもすぐになくなる」

富山県の最低賃金は、年によってバラツキがあるものの2005年以降、引き上げが続いています。去年10月に見直された現在の最低賃金948円は、前の年よりも40円上がり、10年前と比べると236円上がっています。

最低賃金は今後、都道府県ごとの地方審議会で話し合いが行われ、10月以降、引き上げ額が決定します。

富山県の最低賃金を議論する富山地方最低賃金審議会の事務局の成田丞志さんは─。

富山労働局 労働基準部賃金室・成田丞志室長
「富山県においてもかつてない目安額ということですので、事務局としても慎重かつ十分にご審議いただくようにお願いをいたいと考えております最低賃金というのは三要素と言われるんですけれども、その地域で働く皆さんの生計費、賃金水準、それから企業の賃金の支払い能力の3つを考慮して、今後、議論されていくということになります」

最低賃金を決める際の基準となるのが「①労働者の生計費(生活費)」「②賃金の水準」「③企業の賃金の支払い能力」の3つだといいます。審議会では、どのようなメンバーで話し合うのでしょうか…。

富山労働局 労働基準部賃金室・成田丞志室長
「富山地方最低賃金審議会は公益代表(大学の教授や弁護士)、労働者代表(労働団体や労働組合の委員)、使用者代表(経営者団体や経営者)の方々で構成されています」

あすから8月上旬にかけて集中的に審議が行われ、例年通りであれば10月上旬くらいに富山県の最低賃金が決まる見通しだといいます。

富山労働局 労働基準部賃金室・成田丞志室長
「最終的に最低賃金というのは、セーフティネットとして機能することが求められていて、これが一番重要ところなのかと考えています」「一方で、最低賃金があがると、企業の人件費が増加するわけですから、労働局としては賃金の引き上げに向けた企業支援ということで、業務改善助成金とかキャリアップ助成金といった支援策の周知も同時に図っていきたい」

最低賃金を守っているかどうかの調査は、企業を対象に抜き打ちで行われていますが、最低賃金改定後には、より集中的な最低賃金の調査も行われるといいいます。

富山労働局 労働基準部賃金室・成田丞志室長
最低賃金が変わったあとには、例年200~300程度の企業を対象にして、これは過去の事例から最低賃金違反が多くみられた業種や企業とかそういうところから選定するわけですけれども、調査したところで言えば例年5%前後の違反が見られ改善をお願いしている」

記者「違反がみられた場合は?」

富山労働局 労働基準部賃金室・成田丞志室長
「まずは改善していただくということが我々としては大前提になりますが、それでも直さない是正しないということがあれば、最悪の場合は書類送検ということも考えております」

一方、最低賃金の引き上げが県内経済に与える影響について、北陸経済研究所は県内への経済効果は限定的だとみています。

北陸経済研究所 倉嶋英二 総括研究員「大きく変わるかというと、それほど変化はないという風に思っております。最低賃金の公表されている方っていうのは家計の主力を支える方ではないという風に思いますので、大きな影響はないのかなと、ただマインドの改善には若干つながる可能性はあります。ただ大きな変化になるかというとそれほどでもない気はします」

記者「マインドの改善とは具体的には?」

北陸経済研究所 倉嶋英二 総括研究員「物価上昇くらいはあがったかということで、若干、引き締めていたのを、もう少し元に戻そうかという感じですかね」

記者「一方で雇用側への影響は?」

北陸経済研究所 倉嶋英二 総括研究員「一般消費者を相手に仕事をしているところについては、割と値上げというのがしやすい環境になっていますので、そのまま影響なく賃上げ分を反映できるかなと思うんですが…。例えば、下請け企業が、その分、価格転嫁できるかというと、必ずしも、そうなっていない状況がありますので、企業によっては若干コスト増加要因になるかなと特に中小企業は。そんな印象はあります」

最低賃金をめぐり、政府は「2030年代半ばまでに1500円」との目標を掲げています。最低賃金の引き上げには人件費の負担が懸念され、企業の生産性向上や価格転嫁の推進といった実体経済に即した賃上げが求められます。

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