東京・渋谷駅前で飼い主が亡くなっても帰りを待ち続けたといわれる「忠犬ハチ公」が、駅員に「お手」をする様子を撮影した写真が見つかった。飼い主の上野英三郎・東京帝国大教授は「心が卑しくなる」として芸をさせなかったといわれる。ハチ公に詳しい学芸員は「一般の犬同様にお手をして、えさをもらったことがわかる唯一の記録」と指摘する。

「お手」をしようと左前足を上げるハチ公=渋谷区郷土博物館・文学館提供

◆「多くの人との触れ合いの中で」

 写真を持っていたのは東京都あきる野市の五味堅治さん(91)。渋谷駅の駅員だった父の嘉三郎さんに向かい、左前足を上げる姿が写っている。今年2月、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館に寄贈された。  ハチ公は1923年に生まれ、35年3月に死んだ。同館の松井圭太学芸員(56)は、耳のたれ具合からハチ公は晩年で、周囲の人たちの服装などと照らし合わせると、33年12月~34年1月ごろに撮影されたとみる。「多くの人たちとの触れ合いの中で覚えたのではないか」と、通行人らから「お手」を教えられたのではないかと推測した。

お手をするハチ公の写真について説明する松井圭太学芸員

 写真から、ハチ公の胴輪に南京錠のような鍵が付けられていることが分かる。当時胴輪は高価で、人を疑わない性格のハチ公はよく盗まれたといい、鍵は盗難防止だったと考えられる。  区郷土博物館・文学館で開催中の「新収蔵資料展」で10月1日まで展示。月曜(休日の場合は直後の平日)休館。問い合わせは同館=電03(3486)2791=へ。(中村真暁) 

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