復興への祈りを込めて夜空に浮かぶランタン=21日夜、石川県穴水町で
◆「ランタンのようにすべてが上向いてくれれば」
午後8時、2007年の能登半島地震後整備された県道「復興シンボルロード」で、来場者が黙とう後に青いランタンを打ち上げ、哀悼と復興の祈りを放った。商店街を流れる真名井川沿いには、約1000個のキャンドルが並び、優しく穏やかな光が市街地を包んだ。 地元の穴水高校2年の天野慎之輔さん(16)は「亡くなった人の分まで、平和で幸せでいたい」と見上げ、同町大町の無職加波和子さん(68)は「ランタンのようにすべてが上向いてくれれば」と願いを込めた。一部には「みんなが一日一日を大切に過ごせますように」などの願い事が書き込まれた。◆「夏の風物詩」イベントは道路状況などで断念
穴水ゆかりの鎌倉時代の武将、長谷部信連(のぶつら)をしのぶ同町の夏の風物詩「長谷部まつり」の代替イベント。地震で路面状況が悪く、呼び物の武者行列やパレードを断念し、復興をテーマに据えた。地震で大きな被害を受けた穴水商店街と穴水駅前を中心に復興市を企画。飲食や物販など約30店舗・団体のブースが軒を連ね、にぎわいを見せた。 商店街の特設ステージでは、被災した地元中高生の合同ブラスバンドや御陣乗太鼓、輪島高洲太鼓など地元の太鼓団体が復興への祈りを込めて、演奏を披露した。 ◇ ◇◆創業100年超の老舗衣料品店、7カ月ぶり再始動
約7カ月ぶりに商店街で衣類を販売した小林由紀子さん(右)=21日、石川県穴水町川島で
穴水商店街にある店舗が倒壊した創業100年超の老舗衣料品店「バル・こばやし」(石川県穴水町川島)は、イベントの復興市で地震後初めて衣料品を販売した。商品を売るのはおよそ7カ月ぶり。店を夫と切り盛りし、地震で実父を亡くした小林由紀子さん(53)は、常連客との久々の再会に表情を明るくした。 商店街の一角のブースに夏物のTシャツや下着、靴下など約500点が並ぶ。「本当に大変だったね」「また店してよ」。なじみ客から次々と声をかけられ、小林さんの表情が緩んだ。「時間がかかってしまったけど、励みになる」と笑顔が絶えない。◆「亡くなった父のおかげで助かった」
元日、小林さんの父親=当時(82)=は商店街近くにある自宅の倒壊に巻き込まれ、命を落とした。一緒にいた自身も、がれきの下から命からがらはいだした。父から引き継いだ店舗は全壊。親戚が所有する富山県氷見市のアパートに、今も身を寄せる。 直後は気持ちが沈み、店先に立つことは考えられなかった。それでも、こうやって出店できたのは、地元客の後押しが大きい。倒壊店舗の下で生き残り、解体の際に救い出した衣類を並べ「元々なかったようなもんやから」とほぼ原価で販売した。 今は「お父さんが全部抱えてくれて助かったんや」と考えるようにしている。店舗は4月中旬に公費解体されて更地となったが、同じ商店街の一角に建設される仮設商店街に入る予定だ。「3分の1ほどの大きさになるけど、少しでも皆さんの役に立てれば」と前を向いている。(小林大晃) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。