全国的に感染が拡大している新型コロナ。感染に気づかないまま、重症化するケースも増えている。救急外来の1日に密着すると、猛暑が続く今の時期ならではの特徴が見えてきたー
▽医師A 「CPA!(心肺停止)。60歳女性。昨日から体調不良」
▽医師B 「CPAね。行きますか」
7月中旬。沖縄県・豊見城市の「友愛医療センター」に、救急隊からドクターカーの出動要請が入った。心肺停止とみられる60歳女性がいるという。一刻を争う事態だ。
▽友愛医療センター救急科・山内素直部長
「(玄関の)チェーンはかかってるけど、中で倒れているのは分かっている」
<緊急自動車が出動します。ご注意ください>
医師と看護師が乗り込んだドクターカーが、サイレンを鳴らして現場に急行する。
出発から数分ほどで、救急隊と合流。
▽山内医師
「CPA(心肺停止)じゃないね。暑い。めちゃくちゃ汗かいていて、たぶん熱中症だね」
「クーラー無し。扇風機とかもないです?窓閉め切っていて」
蒸し暑い部屋の中で倒れていた女性。幸いなことに意識はあった。職場に来ないことを心配した同僚が家を訪ねたことで、今回の救急要請に至っていた。
▽山内医師
「昨日から体調が悪かったらしい。室内にエアコンがついてなくって、窓を閉め切った状態で多分ひと晩過ごしてしまって、おそらく熱中症になってしまった」
「もう自分で動けなくなるぐらい重症な熱中症、心肺停止じゃないか、心臓も呼吸も止まってるんじゃないかということで、救急隊から呼ばれた。結果的には違ったんですけども、最近は現場に行ってみると熱中症で倒れていて、かなり状態が悪いという患者さんが多くなっている感じがします」
▽看護師 「(体は)熱いですか?」
▽救急隊員「何分前から倒れているか、ちょっと不明です」
▽看護師 「コロナは?」
▽救急隊員「コロナ陽性」
熱中症患者が「コロナ感染」というケースが増えている
▽山内医師
「6月以降、熱中症と思われる症状で受診する、運ばれてくる患者さんが増えたんですね。でも調べてみたら、コロナにもかかっていたという方が結構います」
「先週もドクターカーで出た症例は、庭で倒れていて体温もすごく高いから熱中症です、という救急隊からの話で、行ってみたら確かに熱中症なんですが、コロナも陽性で。おそらくコロナ陽性でフラフラして、脱水になったりとか、うまく水分摂取もできなくて(倒れた)。暑い環境にさらされると、熱中症にもなってしまう。本当にダブルパンチ」
熱中症を含め、救急外来を受診後に、コロナと判明した人の割合は、全体の3分の1に上る。
▽院内携帯を取る山内医師
「はい、山内です。あーもしかして…陽性ですか、はいわかりました。コロナが陽性になりました」
「PCR陽性。PCR検査してよかったですね」
取材中にも次々と、患者のコロナ陽性が判明していく。こうした状況は、救急車の受け入れに深刻な影響を及ぼしていた。
▽山内医師と救急隊の電話
「頭の検査と処置はできますけど、コロナだとうちのも病院ベッドがない、ほぼないので。おそらく施設に戻ってもらうことになります、それで大丈夫ですか」
入院できるベッドがないため、救急車の受け入れ要請を断らざるを得ない。6月は、627件の受け入れ要請のうち、3割にあたる199件を断った。
▽山内医師
「最近は、熱とか、息苦しい、という皆さんが思い描いているようなコロナの症状がなくて、何かフラフラしてますとか、転びました、頭を打ちました、で調べたらコロナでした、というのが多いです」
県内で流行中のコロナ。重症化してから感染に気付くケースも増えていることから、山内医師は、注意をよびかけています。
▽山内医師
「コロナは、従来から言われてるような感染予防対策をしっかりしてもらうことで、ある程度防ぐことができると思うんです。そして、身近でコロナが流行してるということを改めて認識してもらうこと。知ってもらうことも大事だと思います」
<取材MEMO>
友愛医療センターでは現在、医師・看護師が添乗するドクターカーを運用していますが、新たに「患者の搬送」を行うことができる “救急車型のドクターカー” の導入を目指し、クラウドファンディングを実施しています。
必要な費用の約半分にあたる2000万円を、今月(7月末)までに集めることが目標で、19日の放送時点までに1640万円に到達しています。目標達成まであと一息だということです。支援の方法は、「友愛医療センター ドクターカー」等検索してご確認ください。(取材 比嘉チハル)
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