沖縄を拠点に活躍する社会福祉士・防災士の稲垣暁さん。RBC iラジオで毎週水曜日、防災の知識や暮らしに役立つ情報を発信しています。
この記事では、毎年この時期に必ずお伝えする「夏休み前に知っておきたいビーチの危険生物」についてお送りしていきます。(月~金・あさ7時生放送「アップ‼」7月17日放送回より構成)
沖縄県は6月1日から9月30日の間、「ハブクラゲ注意報」を発令
稲垣)ハブクラゲには何の罪もないのに“注意報”って、どうも引っかかるというか人間の都合で危険生物扱いをしてちょっと申し訳ないなと思いつつ、昨年度どういうトラブルがあったのかまずデータから見ていきます。
沖縄県の衛生環境研究所が1998年から2023年間の26年間の海の加害生物による被害について報告をしていますが、それによりますと、被害総数は26年間で6624件!
ー多い!
稲垣)うち、ハブクラゲが43.4%。半分近くはハブクラゲ、だからハブクラゲ注意報が出るんやな、ということが分かりますよね。ほかのクラゲ類が21.8%で、これはイソギンチャクも含むんですよね。合わせて65.2%。
こういう刺胞動物に刺されるトラブルが発生しているんだけども、(近年は)被害件数として減ってはいます。去年は66件。この26年間では1番少ないですが、多いとき、1999年は年間414件もあったというんです。
ー当時、整備されているビーチ以外でも、好きに泳いでいた感じがします。今に比べたら。
稲垣)なおかつ観光客の数が(昔と今は)全然違います。7月・8月に集中をしていて、全体の7割は7、8月にこのトラブルが起こってしまっていますね。
それから去年の66件の内訳を見ますと、「ハブクラゲ」が11件で最多、次が「カツオノエボシ」3件、その他クラゲ類15件、イソギンチャク6件で、クラゲとイソギンチャクで35件、53%に上ります。
被害にあった人の住んでるところ見ますと、昨年は54.5%が県外の方、つまり観光で来られた方が半分以上だったということですね。場所で見ると、1番沖縄県内で多いのはどこだと思いますか?
ー人が多いところ那覇とか宜野湾とかですか?
稲垣)実は1番多いのは宮古島市29件。66件の半数まではいかないけども、圧倒的に宮古島なんです。第2位が名護市の9件。本部町5件、今帰仁・うるま市・那覇市3件ということで。やっぱり観光客が海に入るところが多い地域で被害が出てしまっています。
去年8月は名護市のビーチで7歳の女の子が刺されて、呼吸停止と意識不明になっているんです。このときは偶然居合わせたお医者さんが心肺蘇生をしてドクターヘリで搬送されて、一命はとりとめました。
ー良かった…パーソナリティ・ナガハマヒロキ
稲垣)結構やっぱり重症化してしまうということなんですよね。ビーチには侵入防止ネットがあっても、波が高いときにネットを越えてハブクラゲが侵入してしまうということがありうるという新聞報道もありました。
ではハブクラゲ刺されたときにどうしたらいいのか。この女の子のように、重症の場合は呼吸抑制や血圧低下などショック症状も出てしまうので、やっぱり適切な対応が必要になります。
刺された!と思ったら…
まず、刺されたと思ったら直ちに、海から上がりましょう。そして刺された部分は絶対に擦ってはいけません。さらに、お酢をたっぷりかける。特に子どもさんとか、普段から伝えておかなきゃいけないですね。
ー学生のときとかは自転車の前かごに酢を入れて、割と必須アイテムという感じでみんな持っていってました。
稲垣)そう。そして触手がワーッと巻き付くので、丁寧に取り除いて、痛みが強いときは氷などで冷やし、速やかに医療機関に行きましょう。
そして、大事なのは「海水かお酢」をかけることなんですね。やっちゃいけないのは「真水」での処置。
ーやってしまいそう!水道水とかお湯とか…
お湯は駄目なんですよね。アルコールとか、砂で揉むとかも絶対駄目なんです。水は何でアカンのかと言ったら、浸透圧の差で、刺胞の毒液が出てしまうということがあるんですね。
クラゲの種類が不明の場合は、酢はかけずに「海水」
稲垣)そしてこのハブクラゲと双璧をなすと言ってもいいぐらいの「カツオノエボシ」。これはまず海水や刺胞球や触手を洗い流すということが必要です。そして“患部を40度か50度のお湯につけるか、冷やす”ということになります。カツオノエボシの場合は。
絶対にやってはいけないのが、真水・アルコール・砂で揉む、これはハブクラゲへの対応と一緒なんだけども、違うのが、「酢をかけちゃいけない」んですね。
ーそうなんだ。難しい判断ですね。
稲垣)だから、クラゲの種類が不明の場合は、酢はかけずに「海水をかけましょう」ということは徹底していくことが大事ですね。
ー「海水をかける」はハブクラゲでもカツオノエボシでも、共通した対処法なんですね。
稲垣)キラキラ光ってとても綺麗ですからね。近寄りたくなりますが、危険生物だというところを認識してほしいと思います。
(聞き手 パーソナリティ・ナガハマヒロキ、RBCアナウンサー鎌田宏夢)
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