三重県出身・松浦慶太さん39歳。長崎県出身・藤山裕太郎さん39歳。
惹かれあって結ばれたこの一組のカップルが、《住民票の続柄》を巡る問題で注目を集めている。
同性同士のカップルへの批判の声もある中、どうして2人は《住民票の続柄》にこだわり訴え続けるのか?
LGBTQ自認者に対する差別と、自身の中の葛藤に苦しみながら生きてきた2人の人生から、今回の《住民票続柄》問題を見つめるシリーズ2回目。
カミングアウト
松浦さん自身が「ゲイ」であることを自覚したのは中学1年生の時だったという。学校の帰り道、男子のグループで帰っていたときのこと。
「慶太は好きな女子は誰なん?」と聞かれた。
抑え込んだ思い…吃音症状が出るように
松浦さんの頭にぼんやりと浮かんだのは男子のことだった。
「これは人に言っちゃいけない、とんでもないことだ」
男性が好きなこと、それは社会的に話してはいけないこと、治さないといけないことなのだと一瞬で悟り、心を閉じて抑え込んだ。
その後、吃音の症状が出るようになった。
転機は大学生のとき。
偶然出会ったLGBTQ当事者の友達をきっかけに、人と積極的に関わるようになった。大学ではLGBTQサークルの代表も務めて活動した。
これまで伝えられていなかった両親にもカミングアウトした。
「東京は進んどるなあ」ー父親はそう言って意外にもすんなり受け入れてくれたようだった。でも、母親は違った。
なんやこれ。こんな気持ち悪いの送ってきて
30歳のとき、松浦さんは当時付き合っていたパートナーを連れて三重県に帰省した。母はパートナーに対してとても冷たい態度だった。
後日、そのパートナーが松浦さんの母親にクリスマスプレゼントを送ってくれた。母親は松浦さんに電話をかけてきてこう言った。
「なんやこれ。こんな気持ち悪いの送ってきて」
「女の人と結婚して孫を産んで欲しかった。あんたが私の夢を壊した」
以来、母親とは音信不通になった。
「ケツ掘られるぞ」…いつバレるか
社会の風当たりも強かった。
松浦さんは大学卒業後、住宅設備メーカーの海外事業部で勤務した。
職場では、「ゲイ」に対して差別的な言葉が飛び交っていたという。
「〇〇(ゲイと噂される社員の名前)と会議室で一緒になるなよ、ケツ掘られるぞ」
「前の会社でゲイってカミングアウトしたやつがいて、マジでひいた」
「自分はいつバレるのか…」 ヒヤヒヤする毎日だった。
定年まで働くのは厳しいと感じ、退職した。
その後引っ越しや転職を経て2018年、松浦さんと藤山さんは出会い交際をスタート。2023年6月、尼崎市の神社で結婚式を挙げた。
受けて入れてくれたはずの松浦さんの父親は、世間体を気にしてか「参列しない」と頑なだった。結婚式には松浦さんの兄だけが参列した。
藤山さんの身内は1人も参列しなかった。
藤山さんはまだ、周囲にカミングアウトできずにいた。
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