【ソウル=上野実輝彦】韓国大法院(最高裁)は18日、同性カップルに対して異性間の事実婚などと同様に、健康保険上の扶養関係を認める初めての判決を下した。保守的キリスト教勢力などの影響により、差別的な待遇を受けてきた韓国の性的少数者(LGBTQ)の権利向上が進む可能性がある。  日本では一部自治体が、同性カップルを事実婚と同様に住民登録し健康保険の被扶養者になれるようにする取り組みを始めているが、法的には同性カップルの被扶養者資格は認められていない。韓国が日本に先立ち、制度整備に向けた司法判断を示した形だ。

◆被扶養者資格を認めないのは「性的指向を理由とした差別」

蘇晟旭さん㊨=2023年3月、上野実輝彦撮影

 訴訟では、同性カップルだとの理由でパートナーの健康保険の被扶養者資格を取り消された蘇晟旭(ソ・ソンウク)さん(33)が、国民健康保険公団に処分取り消しを要求。一審では敗訴したが高裁で逆転勝訴し、公団側が上告していた。  最高裁は、健康保険制度に関し「時代の変化に合わせて健康保険が必要な人を被扶養者と認め、事実婚関係でも認定している」とし、同性カップルが「夫婦生活に準ずる経済的共同体を形成しており事実婚と差がない」と指摘。被扶養者資格を認めないことは「性的指向を理由とした差別」だと結論づけ、公団が憲法の平等原則に違反したとする高裁判決を支持、上告を棄却した。

◆同性婚については、法的に認めないとの立場を維持

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 一方で「同性のパートナーを被扶養者と認める問題と、民法や家族法上の『配偶者』の範囲を確定する問題は異なる議論になる」として、同性婚を法的に認めたわけではないとの立場も改めて示した。  蘇さんは判決後「今日の判決を架け橋として、性的少数者も婚姻制度を平等に利用できるようになればうれしい」と語った。 

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