静岡県西部の山あい・水窪にある個人商店「スーパーまきうち」です。おいしい総菜や魚に評判のある「まきうち」。経営する若手夫婦には店だけでなく、水窪のまち全体を「元気にしたい」という情熱がありました。

<客>
「味付けは良いしね。第一ここの奥さんと若旦那さんが、いいの。やっぱり人柄だねえ」

店を切り盛りするのは若手の経営者夫婦です。社長の牧内真美さんが、売り場の総菜をSNSで発信していました。

<スーパーまきうち 牧内真美社長>
「田舎でもこういうことしてるお店があるんだとか、こんなお総菜作ってるんだっていうことを色んな方に伝えられたらなって」

藤枝市で生まれ育った真美さん。結婚を機に夫・基さんの実家「まきうち」で働くことを決めました。まちの外から来た真美さんは、総菜に改善の余地を見出します。味の質はもちろん、種類を増やし、1人分サイズにも対応。これが地域住民のニーズをくみ取った結果だといいます。

<スーパーまきうち 牧内真美社長>
「目で楽しめる中で「何が良いかな」って選べるのがすごく大事だと思って」

浜松の中心市街地から車で2時間以上離れた水窪地区。過疎が進み、高齢者の夫婦や1人暮らしという世帯が大半を占めます。

<熊崎秀子さん>
「きょうは「まきうち」さんの総菜をいただきましょう。はい、どうぞ」

二人暮らしの熊崎さん夫婦。「まきうち」の総菜のファンです。

<熊崎秀子さん>
「かぼちゃ。私好みの味です。ちょっと甘口でしょっぱい」

一方、水窪で育った店長の基さん。大切にするのは、山あいの住民が望む新鮮な「海の幸」を届けることです。

週4日、午前3時に水窪を出発し、自分が信じるおいしい魚を買い付けて、その日のうちに店頭に並べます。美味しい海の幸が山で食べられる。「まきうち」の売り場に基さんが捌いた魚が並ぶのを、住民は心待ちにしています。

<スーパーまきうち 牧内基店長>
「あっ出た。どうすか!蛸は!」「ありますよー」

やり取りしていた相手は北海道の漁師。良い魚を手に入れるため、全国にネットワークを張り巡らせています。この日は向こうから売り込みのあった蛸を仕入れました。

<スーパーまきうち 牧内基店長>
「魚は先代からずっと大事にしてきたもので/山だから食べられないっていうのは絶対ない」

2022年から始めたのが『山でマグロ祭り』。イベント当日は、なんと1000人もの客が集まりました。

<スーパーまきうち 牧内基店長>
「水窪って目的がないと(外の人は)来ない場所なので、何かしらの『目的』を作りたいっていうのがあった。可能性しかないですよね、ここには」

店の外でも、水窪を売り込む活動は展開されています。真美さんが2023年6月から取り組んでいるのが空き家の活用。創作スペースや展示会場として貸し出す計画で、すでに50組が利用しています。

<スーパーまきうち 牧内真美社長>
「外から来てくださった方が、こうしたいい場所があると、「水窪良かったよ」って、『水窪』って単語をもっともっと発信してくださると嬉しいなって」

過疎のまち・水窪地区。夫婦二人三脚の挑戦は、地域の将来の可能性を大きく広げています。

<浜松総局 野田栞里記者>
国が認める県内の過疎エリアを示すマップです。中部・西部の山間や伊豆半島が当てはまります。こうした地域では、少子高齢化、耕作放棄地や空き家の増加、インフラ整備の低下などといった問題も生じます。放っておけば過疎は進む一方です。今回取材した夫婦のようなアイデアと行動力がまちの未来を変えるカギになる、まちを変えるのはやっぱり人なんだと思いました。

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