◆郵便局に連れて行き、振り込み手続きの手伝いも
中部地方に住む50代女性が、首都圏で独居する90代義母の被害に気付いたのは、2022年11月だった。 義母は認知症で、訪問介護を受けていた。ある日、義母に郵便局の通帳を見せられたヘルパーが、別口座への約400万円の振り込みを発見。東京都板橋区にある「インターネット不動産販売」が振込先だった。認知症高齢者に不動産を売り付けていたとみられる「インターネット不動産販売」のホームページ(一部画像処理)
女性が同社に問い合わせると、義母は相模原市にあるマンション1室の所有権の一部を買わされていたことが分かった。同社は義母を郵便局に連れていき、振り込み手続きの手伝いまでしていたが、「しっかりしていて認知症には見えなかった」と言い張った。 義母宅の電話の自動録音機能には、業者が世間話を装って情報を引き出す生々しいやりとりが残されていた。◆「お住まいは○○でしたよね」「ヘルパーさんは、いつ来る?」
「以前伺ったことがあるんですよ。『あなたも若いんだから頑張りなよ』と励ましていただいて」「お住まいは○○区○○でしたよね」。「ヘルパーさんはいつ来るんですか」 かまをかけて住所を聞き出し、自宅に行っても邪魔が入らないタイミングを探っていた。 インターネット不動産販売を巡り、警視庁は6月、都内の認知症女性にアパートの部屋を売り付け計5000万円をだまし取ったとする準詐欺容疑で、同社従業員の男ら4人を2度逮捕。今月16日には神奈川県内の認知症女性への同容疑で、4人のうち3人を再逮捕した。◆認知症の進み具合見定め、価格をつり上げたか
押印(イメージ写真)
捜査関係者によると、男らは古い中古物件を数百万円で調達し、数倍から10倍ほどの価格で認知症の高齢者に売りさばいていた。神奈川県の女性が被害に遭った事件では、認知症の進み具合を見定め、だませると踏んで販売額を700万円から1400万円に倍増させた可能性もあるという。 被害は同社関連だけではない。別の捜査関係者は「同じことをしている業者は他にもいる」と指摘する。高齢者の手元に現金がない場合、住んでいる家を売却させたり、生命保険を解約させたりして、物件の購入費用をつくらせるケースもあるといい、「今なお被害は増え続けている」と警鐘を鳴らしている。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。