能登半島地震をきっかけに、約15年間倉庫に眠り続けていた巨大な灯籠「キリコ」が復活した。13日、石川県珠洲(すず)市宝立町柏原の助政(すけまさ)集落であったイベントで、担ぎ手がおらずしまわれたままだったキリコを住民が「数少ない無傷。出して地域を盛り上げよう」と担いだ。今後は近くの体育館に展示され、キリコが被害を受けた地域の祭りなどで使ってもらう。

◆若者減り、担ぎ手不足で倉庫にしまわれたままだったが

 助政集落は地震による津波被害を受けた沿岸部から西へ約2キロ。住宅被害を受けた家庭は多かったが、蔵(くら)雅博区長(64)によると、倉庫にあったキリコは無傷のまま残っていた。  集落は24世帯。もともと4月下旬に行う春祭りで担いでいたが、若者が減り、15年ほど前から倉庫から出していなかったという。

約15年ぶりに倉庫から出されたキリコを担ぐ住民ら=13日、石川県珠洲市宝立町柏原で

 地震後、さらなる人口流出を懸念した蔵さんは「もう一回、地域に人を呼び戻さないといけない」と見附島観光協会や地域活性化に取り組む団体と、地域で、キッチンカーや子どもの遊び場などが並ぶ「能登の食まつり」を企画した。

◆「今こそ出さなきゃ」重さ1トン、20人で担ぐ

 「いま出さなかったら今後、永久に出すことはない」と地域の世話役で会社員の助政弘紀(ひろのり)さん(64)らにも相談し、近くの郷地区や石尾谷内地区の住民にも協力を呼びかけてキリコを出し、担ぐことにした。  1週間ほど前から、ちょうちんなど飾りを準備し、この日の「食まつり」で登場させた。重さ1トン近いキリコを20人ほどで担ぎ、会場を一周。途中、重さに耐えられず下ろして休むと「そんなことでは復興できませんよ」と会場から声がかけられ、笑いも起きた。

キリコを前に笑顔を見せる蔵雅博さん(左)と助政弘紀さん=13日、石川県珠洲市宝立町柏原で

 自宅が大規模半壊し避難先の金沢市と行き来する近くの書道講師江高恵子さん(73)はキリコを見ながら「本当に明日に向かって頑張るだけ」と話した。  「1回で終わらせてはいけない。今後10年間、形は変えながらでも何かイベントをして復興を成し遂げたい」と蔵さん。キリコは今後、珠洲市宝立小中学校に常設展示するという。(井上靖史、写真も) 

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