インスタグラムやLINE、X(旧ツイッター)など交流サイト(SNS)で投資家や著名人をかたった投資詐欺が相次ぐ。約6000万円の被害に遭った高齢男性の娘が、東京新聞の取材に応じ「家族の蓄えをほとんど失った」と肩を落とした。SNSに不慣れな世代を狙う巧妙な手口に、警察庁は「安易なもうけ話に気を付けて」と呼びかけている。(佐藤航)

◆なんで信じた?「大きなトークグループだから大丈夫だと」

 2023年11月、東京都内の40代女性が神奈川県内の実家に帰ると、80代の父親の様子がおかしい。話しかけても上の空。ずっとスマートフォンを触っている。「何かにはまっているな」。不安になったが、父親が投資詐欺で巨額を失うとは、想像すらしなかった。

父親が約6000万円をだまし取られた女性。「実家の蓄えはほとんどなくなってしまった」という=東京都内で

 被害に気付いたのは、11月末。父親が投資の収益を引き出そうとして業者側に拒まれ、ようやく詐欺と分かった。  父親がだまされたのは「実業家の堀江貴文さんが指南する」という投資広告だった。LINEのグループトークに誘導され、堀江さんのアシスタントを名乗る女性から、金取引への投資を勧められた。以後1カ月弱の間に17回、言われるがままに計約6000万円を指定された口座に振り込んだ。  「なんで信じちゃったの?」。女性の問いに父親が言った。「100人くらいの大きなトークグループだから、大丈夫だと思った」  最初に体験取引の利益として、数千円が振り込まれたことで警戒心が薄れた。「こんなにもうかった。今が買いだ」とあおる、グループメンバーの書き込みに冷静さを失った。指示に従ってインストールした投資管理アプリ上では、5000万円超の利益が出ていることになっていた。

◆SNSや投資の知識に乏しい「高齢層」が狙いか

 警察庁によると、全国の警察が把握した今年1〜5月の「SNS型投資詐欺」の被害件数は3049件。前年同時期の481件を大幅に上回り、被害総額は約430億円に達した。被害者は60代以上が1511件で、半数を占める。資産がある一方で、SNSや投資の知識に乏しい高齢層が狙われている可能性がある。  手口の特徴は、著名人や投資家らをかたる点。堀江さんや衣料品販売大手「ZOZO(ゾゾ)」創業者の前澤友作さん、ジャーナリスト池上彰さんらの画像を無断で使用した詐欺広告がSNS上にあふれ、政府はSNS事業者に広告審査の強化を求めるなど対策に乗り出した。  問題が報道されるようになり、月ごとの被害件数は4月の808件が5月は541件に減少。だが、依然として前年同月の5倍を超えている。警察庁組織犯罪対策2課は「会ったこともない相手からSNSで投資話を持ち出されたら、その時点で詐欺を疑うべきだ」と呼びかけている。 

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