警察官を装い、スマホのビデオ通話でニセの逮捕状などを見せる新たな詐欺が全国各地で相次いでいます。その手口とは。
■「カネの流れを調べるから」と送金させ、だまし取る手口も
日比麻音子キャスター:
警察官をかたって現金をだまし取るという被害が、全国各地で相次いでいます。
たとえば5月には、愛知・名古屋市の30代男性が、LINEでニセの逮捕状を見せられたということです。「栃木県警が逮捕したマネーロンダリング事件の容疑者の共犯として、あなたが疑われています」などと言い、61万5000円を振り込ませてきたという内容でした。
また、7月には島根・松江市で、40代男性がビデオ通話で取り調べを受けました。資金調査が必要などと言われ、211万円を振り込んでしまったそうです。
他にも、5月には岩手・釜石市で、40代男性が1200万円の被害に遭いました。6月には山形・米沢市でも、60代女性がLINEでニセの警察手帳を見せられ、警察に相談しています。
30代や40代の方も被害に遭っているようですが…。
元埼玉県警本部捜査第一課 佐々木成三さん:
専門の私が見ると、すべてがありえないですね。LINEでニセの逮捕状が来たり、ビデオ通話で手帳を見せたりといったことは、警察としてはありえません。
ただ、これは元警察官だからわかることです。知らないと信用してしまう人がいるだろうな、これが一つのやり方なのだろうなといったことは感じます。
日比キャスター:
やり取りなどの記録を見ると、どうやら「あなたは共犯者ですよ」「あなたが事件に関わっている可能性がある」などと、かなり強い言葉をかけられてしまうようです。どうしても動揺してしまいますよね。
元埼玉県警本部捜査第一課 佐々木成三さん:
こういった詐欺の手口の一つは、まず警察官と信用させることです。あとは不安をあおって、冷静な判断をさせないこと。やはり、逮捕状が出ているということになると周りにも相談ができませんので、そこがこの手口の怖いところですね。
日比キャスター:
手口を知ることで、自分が被害に遭わないための大きな一歩につながると思いますので、改めてその手口を見ていきます。
まずは、警察官をかたる電話がかかってきます。「逮捕状が出ている」「あなたの口座が犯罪に関わっている」などと言われ、その後LINEなどのビデオ通話で、偽物の逮捕状や警察手帳を提示されます。
そもそも、ビデオ通話で取り調べということはありえないですよね?
元埼玉県警本部捜査第一課 佐々木成三さん:
ありえないです。まず、警察はLINEのアカウントを持っていないので、こういったもので連絡が来ること自体が怪しいですね。ビデオ通話も絶対にありえないですし、本物の逮捕状をビデオ通話で見せることもありえないです。
日比キャスター:
そして、捜査協力の依頼などと称して「カネの流れを調べる」「預金を送金してほしい」といったことを言われ、結果として現金がだまし取られるという手口になっています。
繰り返しになりますが、捜査の協力するためにお金を取るということもありえないですよね?
元埼玉県警本部捜査第一課 佐々木成三さん:
お金の流れを調べることで預金を送金することもありえませんし、この時点を知ったうえで警察は逮捕状を持っていますから、これを調べること自体がもう嘘ですね。
まずは、こういった電話があったときに不安にならず、冷静な判断ができる環境をつくってもらいたいなと思います。
日比キャスター:
たとえばインターネットバンキングなど、かなり距離が近い世代こそ、こういった被害に遭いやすいという傾向もあるようです。どのようにご覧になりますか?
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
それが驚きですよね。今までの“オレオレ詐欺”などは高齢の方が引っかかってしまっていましたが、今回は普通の比較的若い、しかも1000万円などのお金を持っているような人たちが、簡単に引っかかってしまっています。
SNSだけに触れていると、フェイクなどに対するある種のリテラシーみたいなものを十分に養う力がなくなってしまうのか、「日本、大丈夫かな」という気もします。新聞やニュースなどを見ていれば普通にわかる感じがするので、気をつけてもらいたいですよね。
■犯罪者は「警察ですよね?」などと事実確認されることを嫌う
日比キャスター:
警察官をかたった事件には次のようなケースもあったようで、音声が残されています。
犯人の音声(行徳警察署提供 2023年2月)
「恐れ入ります。行徳警察生活安全課のナラオカと申します。
○○さんのご自宅でお間違いないでしょうか?」
被害者
「そうです」
犯人
「うちの署の方で銀行職員を2名逮捕してまして、○○さんのご自宅を狙っていたと言っているものですからね。ちょっと名前の確認を取っていただきたいんですけど、ヤマダナオキという41歳の千葉銀行の職員ってご存じないですかね?」
被害者
「どこの支店ですか?」
犯人
「そうですか、じゃあわからないですかね」
被害者
「すみません、かけ直していいですか?行徳警察ですよね?」
犯人
「はい」
被害者
「教えてもらえる?」
犯人
「…(※電話を切る)」
日比キャスター:
犯人とみられる人物は、ここで電話を切りました。やはり、被害者の方が冷静に「かけ直していいですか?」「行徳警察ですよね?」と確認した部分は大変大きいですね。
元埼玉県警本部捜査第一課 佐々木成三さん:
電話だと何も言えなくなっていますので、これが一番の効果だと思います。犯人からこういった言葉があったときに、もう詐欺を疑っていたということですね。
ファクトチェックしようとされることを犯罪者は一番嫌がりますので、こういった行為をぜひしていただきたいなと思います。
日比キャスター:
このやり取りに関してご紹介した内容は、実は千葉県警のホームページにも掲載されています。さまざまなケースについて、正しい情報を持っておくことが武器になるのかなとも思いますが…。
元埼玉県警本部捜査第一課 佐々木成三さん:
こういった特殊詐欺というものは、まずは手口を知ることが一番の防犯対策になると思います。全国各地でこういった犯罪が起きていることをぜひ知っていただき、その情報を必ず確認するという習慣づけをしてほしいと思います。
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<プロフィール>
佐々木成三さん
埼玉県警本部捜査第一課に10年間在籍
現役時代はサイバー捜査の導入に着手
斎藤幸平さん
東京大学 准教授 専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破
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