福島県内で長く愛されている老舗のいまに迫る「老舗物語」。きょうは、バレエ教室です。福島市のこの教室は、半世紀以上にわたり世界で活躍するダンサーを多数輩出してきました。「福島から世界へ」。先代の思いを受け継ぎながら生徒を見守る女性に迫ります。

すらりと伸びる手足。繊細で軽やかな動き。「瞬間の芸術」とも言われる「バレエ」。このバレエの舞台で、世界で活躍するダンサーを数多く輩出している教室が福島市にあります。

『竹内ひとみバレエスクール』です。福島市、郡山市、須賀川市の県内3箇所に教室があり、3歳から大人までおよそ100人が通っています。

教室を主宰する竹内美和さん。7年前にこのバレエ教室を引き継ぎ、3代目です。

--竹内美和 主宰(竹内ひとみバレエスクール)「色々な子に可能性があるので。1人でも多くバレエを大人になってやめてしまっても、『あの時やっててよかったな』と思ってもらえるような教室にしたいと思っています。」

創設者の竹内ひとみさんが、教室を開校したのは57年前。本格的なクラシックバレエを、子どもから大人まで学べる教室を福島に作りたいと思ったのがきっかけでした。

ここを巣立った多くの子どもたちが、国内外のコンクールで受賞し、輝かしい成績を納めてきました。

--竹内 主宰「ひとみ先生の時代は『まず東京』みたいな。でも私たちの頃になると福島からも海外にいけるようになっていた時代だったので。福島から世界に生徒をだしたいねというのをずっと目標にやってきた。」

「福島から世界へ」。美和さんはその思いで、子どもたちを導いてきました。しかし、震災と原発事故で教室は困難に直面しました。

--竹内 主宰「福島から本当に子どもが減ってしまった。もうそのままバレエはやらないっていう子もいたのが1番今までで悲しい経験でした。本当にそういう意味では福島で悠長にバレエを習っていていいのかなって考える時期もありました。」

日常が大きく変わる中で美和さんを支えたのが、教室に通う子どもたちでした。

--竹内 主宰「子どもたちがみんなここにくるのが楽しみって思って来るので、やっぱり開けておかなきゃいけないというのは常に思ってますけど。目標になることがあると子どもたちの顔が変わるので、本当にそれを毎日見ているだけで元気になるかなというのはあります。」

--バレエダンサー「おはようございます。」

この日、1人のダンサーが教室を訪れました。プロのバレエダンサーとして活躍する菊地研さんです。10歳からバレエを始めた菊池さん。この教室の「卒業生」です。プロとして国内外で活躍する菊地さんにとってこの教室は特別な場所です。

--菊地研さん「福島に自分の教室があるということが、なにか辛いことがあった時とかに戻れるというか、そういうよりどころとしてすごい大切な場所かなと思いますね。」

豊かな表現力と存在感のある踊りで10代の頃から多くの注目を集めてきた菊地さん。16歳で上京し、日本を代表する一流ダンサーが数多く在籍する名門『牧阿佐美バレヱ団』に入団。多くの舞台で主役を務め、バレエ団の顔として活躍してきました。

そして今年3月、24年間所属したバレエ団を退団しました。その菊地さん。今月末に郡山市の舞台に出演することになり、その練習のため久しぶりにふるさとの教室に帰ってきました。

今回、菊地さんが踊るのはバレエではなく『コンテンポラリーダンス』。クラッシックバレエを踊ってきた菊地さんにとって、新たな挑戦になります。

--菊地さん「今回、あえてクラッシックではなくコンテンポラリーの作品に挑戦したいという気持ちもあったので。その技法の難しさを今はちょっとトレーニングしている所です。」

相手役を務める鹿又陽子さん。菊地さんとともに幼い頃からこの教室に通い、技術を高めあってきました。良き友人であり、ライバルのような存在です。

子どもの頃から見守ってきた美和さんは、その成長に目を細めます。

--竹内 主宰「リハーサルしているのを見ると『え、小さいときこうだったのに』とか『ああだったのに』とかっていう思いもあり・・・でも一番楽しみかもしれない。」

--菊地さん「俺は美和先生にやっぱり喜んでもらいたいんで今回。それがね、身近な人から感動させてかないと最後に伝わらないというかね、すごい喜んでもらえたらいいなと思ってやっているんで。」

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年7月11日放送回より)

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