東日本大震災で人口の1割近い人が犠牲になった岩手県大槌町で今、小中学校の児童生徒の不登校が課題となっています。
原因のひとつに大震災による経済的、心理的な要因があると見られています。

岩手県大槌町では2021年度、町内の不登校児童生徒の出現率が急激に増加し、翌年度には過去最高となりました。
2022年度の1000人あたりの不登校児童生徒の出現率は小学校で24.9人、中学校は89.7人といずれも全国平均を大きく上回る事態となっています。
大槌町教育委員会学務課の吉田智課長は「コロナ禍の影響で生活のリズムが崩れたのが大きな要因」としながら、別の要因も指摘しました。
「不登校の背景には経済的な問題もあると見られる」と話します。
大震災の前から県内でも所得水準が低かった大槌町は、震災後の復興に関わる仕事で一時的に所得が上がりました。しかし、復興事業の終了によって所得水準が下がり、震災から13年余りが経過した現在でも、町内では80人ほどの児童生徒が被災した家庭のための就学支援を受けています。
吉田課長は震災が子どもたちの心に与える心理的な影響も指摘します。
「親や祖父母が話す津波の話で怖いイメージにとらわれ心のバランスを崩して登校できなくなる子がいることがアンケートから分かりました」
大槌町では不登校の児童生徒ひとりひとりの不安や困りごとに寄り添った支援を行うため特別支援教育支援員を4人から6人に増強したり、自宅や学校以外の子どもたちの居場所づくりを行うなどの「けやき共育」に力を入れています。
吉田課長は「私たちの中で大震災はまだまだ終わっていないんです」と話し、息の長い支援の必要性を強調しました。

住民のおよそ10人に1人が犠牲になった町で、いまだに色濃く残る東日本大震災の影響を肌で感じながら、不登校を防ぐための懸命の取り組みが続けられています。

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