今月に入り、石川県内各地でクマの目撃情報が相次いでいます。なぜこの時期にクマがこれほどまでに目撃されるようになったのか。クマの生態に詳しい専門家は、2つの理由を指摘します。

今月9日にクマの目撃情報が寄せられた、石川県加賀市山中温泉上野町では、近くの住民が「みんな怖がってはいる。この場所は意外に人家に近いでしょ。この辺であまりクマというのは出ないが、今年はいろんなところで出ている。だから自分たちも今までのクマの出方とちょっと違うのではないかと思う」と不安を口にします。

石川県内各地で相次ぐクマの出没。加賀市では、今月だけですでに18件の目撃情報が住民から寄せられています。なかでも住宅地に近い墓地や道路沿いなど、人間の生活圏で多く目撃されているのが特徴です。

クマの生態に詳しい、石川県立大学特任教授の大井徹さんは、夏場のクマの目撃数が8年前から高止まりしているとしたうえで、夏場にクマが多く目撃される理由について、「6月、7月はクマの交尾期で、オスが交尾相手のメスを求めて広く活発に活動するということと、それと同じ時期に満1歳、2歳の若いクマが自分の生まれた場所を離れて、新しく自分の生活する場所を探すためにこれも広く移動するため」と指摘します。

また大井さんは、人里近くでクマが目撃されるようになった理由に、クマの生態系の変化を挙げます。大井さんは「これまでクマというのは、山奥に行かないと見られなかった動物だが、もうすでに人里周辺で生活している。人里近くということで猟銃が発砲できない箇所もあるし、クマにとってはかえって安全な場所、かつエサもある場所。そういう具合に里山が変化してきた」と話します。


加賀市によりますと、市民に対するクマへの被害対策について、大きく3つの点を挙げています。1つ目は、防災メールやホームページでの目撃情報の提供。2つ目は、適切な場所へのオリの設置。そして3つ目は、町内会に対し、クマのエサとなる果実の樹木などの伐採費用を10万円を限度に助成するというものです。

今回取材した県立大学の大井特任教授は、「このような助成制度は県内の各自治体でも整備されているが、いかに町内会など住民に対し、行政が周知していくかが重要ではないか」と話しています。

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